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なぜタピオカはここまで叩かれるのか/下

写真や食文化の世代格差からバッシングは起きる

杉浦由美子 ノンフィクションライター

なぜタピオカはここまで叩かれるのか/上

 2回にわたって、「なぜタピオカは過剰に叩かれるのか」ということについて言及している。ナタデココ、ティラミス、パンケーキ・・・・・・。今までいろんなスイーツが流行したが、なぜか、タピオカはバッシングの対象になっている。ミルクティに丸いタピオカが沈んでいる飲み物。ただの甘い飲み物だ。それになぜこんなに叩かれるのか。

スイーツに「インスタ映え」は必須条件

拡大shutterstock.com

 今年、パティシエ金井理仁による『TULIP ROSE』というチョコレート菓子店が西武池袋本店地下にオープンした。名前の通り、チューリップの形をしたチョコレートだ。8月の猛暑の中、夕方に通りかかると、テナントの前に行列ができていた。チョコレートは冬の食べ物だという先入観があった私は驚き、その行列を観察した。自宅用として買っている人も多いようだ。夕飯代わりにチョコレートを食べる女性もいるだろう。そして、自宅で可愛らしいお菓子を撮影して、SNSにアップすれば友人知人から「いいね」を押してもらえる。私もよく友人がアップしているお菓子や食事に「いいね」を押している。

 昨今、ブームになるスイーツに「インスタ映え」は必須条件になってきた。

 一昔前から流行っているパンケーキやかき氷も、クリームやフルーツなどでデコレーションするから、インスタ映えする。私が個人的にタピオカより疑問があるのはかき氷だ。

 夏になるとデパ地下にかき氷屋が期間限定で出店をする。客はセルフサービスで買って、簡易なベンチに座って食べる。数年前から800円のかき氷が売られ、「高すぎないか」と思っていたが、今年はとうとう1300円もするメニューが出ていた。高いから若者は買っていない。40代以上の女性たちが並んで購入し、ベンチに座って、スマートフォンで写真を撮っている。

 かき氷は色鮮やかで単体でインスタ映えする。かき氷の写真をアップするだけで、インスタグラムは華やぐ。インスタグラムを眺めていると、中高年の女性はやたら食べ物の写真を載せるが、自分の姿は滅多にアップしない。しかし、若い女性は自分を撮ってアップする。それは若くて美しいから自分の写真を載せるということではないように思える。世代間の感覚の格差があるのだ。

 「小顔効果を狙って写真だけ撮って捨てる」

 ある50代の放送作家はツイッターでこう発言した。

 「タピオカミルクティの大きな容器は小顔がある。若い女性たちは写真だけ撮って、捨てているそうです」

 この中高年の放送作家は渋谷の街に足繁く通っているわけではない。ただ、「若い女が自分を可愛く撮影するためにドリンクを買って捨てているけしからん」という”女性叩き”のストーリーをどこかで耳にし、共感しているだけなのだ。

 ちなみにこのタピオカ叩きは、オジサン媒体だけではなく、中高年女性向けのネットニュースサイトでも載せているから、オバサン層も「タピオカってどうなの?」と思っているようだ。

 しかし、実際には「タピオカを買って小顔効果を狙って写真を撮り、飲まずに捨てる」なんて人間は滅多にいない。

 なのに、どうして、「若い女は小顔効果を狙い、好きでもないタピオカミルクティを買い、飲まずに捨てる。食べ物を粗末にして、けしからん」というストーリーができあがったのか。そこには「自分の写真を撮ってSNSにアップする」という若い世代の女性の行動に対する、中高年からの反発がみえ隠れする。

 私はそれらの若い女性の行動に反感はないが、ただ、違和感がある。

 取材で知り合った大学生女子たちが頻繁にインスタグラムに自分の写真をアップするのをみると不思議でならない。女性がネットに自分の顔をアップすることに抵抗がないのかな、と。恐怖や恥ずかしさはないのかと思うのだ。

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筆者

杉浦由美子

杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター

1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。

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