番狂わせが少ないラグビーというスポーツ
2019年10月03日
アジアで初めてとなるラグビーのワールドカップ(W杯)が開幕した。
当初、関係者がもっとも案じていたのは、日本がどのくらい活躍できるか、だった。大会の盛り上がりは主催国チームの活躍に大きな影響を受けるからだ。
日本は開幕のロシア戦に続き、過去9回の対戦で一度も勝ったことがなかった優勝候補の一角、アイルランドを破った。驚くべき好スタートである。
アイルランド戦のあと、日本の選手からはこんなコメントが出た。
「日本が勝つと信じていたのはスタッフと選手たちだけじゃないでしょうか」
まったく、選手の健闘の前には脱帽するしかない。ラグビー取材の経験がある記者たちはもちろん、ラグビーファンを含めて、日本の勝利を想定できた人は少なかったろう。私自身、アイルランドを相手に接戦に持ち込むことはできても、勝つのは難しいのではないかと思っていた。深く不明を恥じたい。
ラグビーでは世界ランクのほかにティア1、2、3というクラス分けがある。
ティア1は戦績に加えて伝統や歴史的な経緯を考慮し、総合的な実力の評価としてニュージーランド、オーストラリア、南アフリカ、アルゼンチンの南半球4カ国と、イングランド、アイルランド、ウェールズ、スコットランド、フランス、イタリアの北半球6カ国を合わせた計10カ国で構成されている。
次のティア2は日本、フィジー、サモア、トンガ、ロシア、カナダ、ウルグアイ、ナミビア、米国、ジョージアを含む13カ国。W杯に出場はするが、決勝トーナメント進出は難しい中堅国という扱いだ。さらにティア3は、なかなかW杯には出場できない「ラグビー途上国」という分類になっている。
だから、まだ強国扱いされるようになって歴史の浅いアルゼンチンとイタリアをのぞき、かつて「主要8カ国」と称されてきたティア1の伝統国を倒せば「金星」と表現したくなる。逆に彼の地のファンやメディアからすれば、痛恨の「番狂わせ」である。
ラグビーはそもそも、様々な意味で番狂わせが少ないスポーツだ。
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