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[27]台風15号に見る防災課題

福和伸夫 名古屋大学減災連携研究センター教授

 9月5日(木)15時に南鳥島近海で台風15号が発生した。中心気圧は1002hPa、最大風速は18m/sだった。翌6日(金)になっても6時に1000hPaと20m/s、15時に996hPaと25m/sと、勢力はあまり変わらなかった。しかし、海水温の高い日本近海で勢力が一気に発達した。7日(土)10時に970hPa、35m/s、8日(日)6時に960hPa、40m/s、21時には神津島周辺で955hPa、45m/sと「非常に強い」勢力まで発達した。

 そして、9月9日(月)3時頃に三浦半島付近を通過、5時前に千葉市付近に上陸し、水戸付近を通って太平洋に抜けた。千葉市では35.9mの最大風速を記録し、観測史上最大の最大風速や瞬間風速を記録した地域も多い。上陸時は、中心気圧960hPa、最大風速40m/sの「強い」勢力だった。

 この台風から得た10個の課題と教訓を以下にまとめてみる。

記者会見で警戒を呼びかける気象庁の中村直治予報官=2019年9月8日午前11時5分

小型で強い勢力の台風

 台風15号はコンパクトで強風域が小さいので、台風が接近するまでは強い風が吹かない。金曜の帰宅時点では、予報円も大きく、首都圏直撃という危機感は、多くの人になかったと想像される。それが、週末になって急に発達した。 

 気象庁が臨時の記者会見を開いたのは、上陸前日の9月8日(日)の午前11時だった。首都圏を直撃することが確実になり、「首都圏を含めて記録的な暴風になる恐れがある」と、最大限の警戒を呼びかけた。日中での備えを考えれば、ギリギリのタイミングだったと考えられる。日曜の午後に十分な備えができたかどうかがポイントである。そして、日曜の夜から月曜の朝にかけ、いきなりの強風に襲われた。

月曜未明の首都圏上陸

JR山手線品川ー大崎間の線路をふさいだ倒木=2019年9月9日
 9月8日(日)午後3時以降は新幹線も順次運行を取りやめ、首都圏の鉄道各社も最終電車を早め、月曜の朝も計画運休を予定してした。

 しかし、強風による倒木や飛来物によって運行再開が遅れた。遠距離通勤の人が多い首都圏では、危機対応要員は、日曜の午後早い段階で出勤する必要があったが、休日で、まだ風が吹いていない段階での判断は難しかったと思われる。

 行政の危機管理対応要員は役所の近くの宿舎に居住するが、民間会社では総務部局の一般職員が危機管理対応に当たるため、非常時の参集が困難な場合が多い。とくに首都圏では、遠距離通勤が多いため要員不足で初動の遅れにつながる。自動車での近距離通勤が多い地方都市とは事情が異なる。

交通途絶と成田空港孤立

 多数の倒木による鉄道の運転再開が遅れたため、東京都心に本社をおく大会社は、自宅待機の判断をしたところも多く、テレワークの環境整備もあり、月曜の午前中は、都心のオフィスビルはガラガラだったと想像される。

 成田空港では、空港の足となる鉄道やバスが運休し、高速道路も通行止めになったため、空港が孤立状態となった。昨年の台風21号で問題となった海上空港の孤立が、高速遠距離交通に頼る陸上空港でも起きてしまった。台風通過後に、国際便の飛行機が続々と着陸したため、当日の夜には1万3千人を超える人が足止めになった。交通機関が途絶えると、乗務員なども空港に来ることができないため、欠航になった出発便もあった。

孤立した成田空港では、水やクラッカー、寝袋などが配布された=2019年9月9日

経験不足の自治体と近すぎる中央省庁

 千葉県は災害が少なく、東京都心に近い一部地域を除けば、豊かな農村地帯である。このため、県民の生きる力が高く、市町村や県の防災担当は大らかな雰囲気があるようだ。

 千葉県庁は、県域の西北端の千葉市にあり、災害慣れしていなかったこともあってか、市町村の被害報告を待つ形になった。千葉県の市町村数は54と多く、県のプッシュ型支援には限界もある。情報・通信が途絶した市町村からは連絡が入らず、9日に東京電力が示した停電復旧見込みが11日だったこともあり、事態の深刻さに気付くのが遅れた。

 県の状況把握が遅れた結果、メディアも含め、9日の段階では大きな被害が出たとの認識は

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