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災害時の公衆衛生活動と研究倫理を考える

「宮崎・早野論文」は何が問題だったのか

澤野豊明

災害時の地域住民の健康データの取り扱い

 特に今回の件を難しくしているのが、災害時の地域住民の健康データの取り扱いという非常に公益性が高いものが題材となっている点です。

 ご存知の通り、災害時には情報が錯綜し、非常に混乱します。東日本大震災の時に多くの誤った情報がメディアやSNSで流布したことはみなさんの記憶に新しいと思います。そういった状況の中で、災害を被った地方自治体はリアルタイムで情報を集め、その情報を取捨選択の上、最終的には情報を統合し、地域住民を守るために災害対策を継続的に行っていく必要があります。

拡大避難地域の住民を対象に行われた健康診断=2012年1月14日、福島県伊達市

 他方、規模の小さな地方自治体では、十分な専門知識を有した専門家が自治体職員として存在することは稀です。そのため、地方自治体が適切な災害対策を行うためには専門家との連携が欠かせません。

 また、災害時の地域住民の健康データは地方自治体が適切な対策を立てるために必要であると同時に、研究データとしての性格も有します。とはいえ、こうしたデータの取りまとめ自体は地方自治体が住民の健康を守るために行わなければならない、いわば公衆衛生上の〝業務〟であり、一般的な研究とは一線を画すものです。

 一方で、災害時に地域住民の健康データを公表する場合、それは地域住民の健康を守るための行為であるにもかかわらず、「データの目的外使用だから、地域住民への研究参加の個別同意が必要だ」という研究の視点からの考えもあり

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筆者

澤野豊明

澤野豊明(さわの・とよあき) 

神奈川県横浜市出身。2014年3月千葉大学医学部医学科卒業。2014年4月より南相馬市立総合病院で医師として赴任。除染作業員など健康的弱者の健康問題や原発事故後の風評被害について調査を行い、現在福島県立医科大学公衆衛生学講座博士課程に在籍中。2019年8月より仙台市立医療センター仙台オープン病院・消化器外科に勤務。南相馬市立総合病院・地域医療研究センター研究員。