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スポーツは五輪を必要としているのか

オリンピックというドーピング中毒から抜け出すために

小笠原博毅 神戸大学大学院国際文化学研究科教授

キャスター・セメンヤの悲劇

 本年9月6日、前回のリオデジャネイロ五輪女子800mの金メダリストであるキャスター・セメンヤ選手が、故郷南アフリカのサッカー・クラブでトレーニングを開始し、来シーズンには選手登録される見通しであることが報道された。世界選手権で金メダルを三度獲得し(2009年ベルリン、2011年大邱、2017年ロンドン)、ロンドン五輪の銀に続いてついにリオで頂点に立ったこの稀代のランナーが、陸上からサッカーに転向するという。より正確に言えば、このまま陸上を続けることが制度的に厳しくなっているのである。

拡大リオ五輪の女子800mで金メダルを獲得したセメンヤ選手=2016年8月20日

 セメンヤは男性ホルモンの一種テストステロンの値が女性であると判断される範囲を超えているため、男性ホルモンの分泌を抑える薬物を服用して「正常値」の範囲に収めておかないと、女性として競技することを禁じられているのである。セメンヤは生まれてからずっと女性という自覚のもとに、女性として生きてきた。しかし体内には精巣に相当する
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筆者

小笠原博毅

小笠原博毅(おがさわら・ひろき) 神戸大学大学院国際文化学研究科教授

1968年東京生まれ。専門はカルチュラル・スタディーズ。著書に『真実を語れ、そのまったき複雑性においてースチュアート・ホールの思考』、『セルティック・ファンダムーグラスゴーにおけるサッカー文化と人種』など。

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