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女子シングル、モンスター級新人の4回転時代到来

GP(グランプリ)シリーズで何が起きるか

田村明子 ノンフィクションライター、翻訳家

 10月18日から、アメリカ・ラスベガスで開催されるスケートアメリカでいよいよ今季のフィギュアスケートシニアGP(グランプリ)シリーズが開幕する。今季は特に、女子が新しい展開になりそうな予感だ。

 今季から4回転を跳ぶロシアのジュニア女子がシニアに上がってくることは、全ての関係者たちがわかっていたことではあった。

 だが女子は男子以上に、わずかな体型の変化でもジャンプに大きな影響がある。彼女たちがいったい、4回転を持ったままシニアに上がれるのかどうか。

 そんな関係者たちの疑念を吹き飛ばすように、今シーズンのチャレンジャーシリーズではいきなり女子の4回転で開幕となった。

 9月のロンバルディア杯では、アンナ・シェルバコワがシニア女子として初の4回転ルッツを成功させて優勝。

ロシアのアンナ・シェルバコワシニア女子として初めて4回転ルッツを成功させた15歳のアンナ・シェルバコワ(ロシア)

 そして10月5日、さいたまスーパーアリーナで開催されたジャパンオープンで15歳のアレクサンドラ・トゥルソワがフリープログラムで4サルコウ、4ルッツ、そして2度の4トウループと、4回転を4度降りた。

 なんとも、信じがたい時代が現実にやってきたのである。

トゥトベリーゼとは何者か

 その背後にいるのは、ロシアのエテリ・トゥトベリーゼが率いるコーチングチームだ。トゥルソワもシェルバコワも、このトゥトベリーゼのチームが育ててきた選手なのである。

 現在45歳のトゥトベリーゼは、かつてシングルからアイスダンスに転向した経歴を持つ元スケーターで、かのタチアナ・タラソワに師事していたこともある。

 コーチとしてはユリア・リプニツカヤにはじまり、エフゲニア・メドベデワ、アリーナ・ザギトワなど、次々とトップ選手を育てて表彰台に送り続けてきた。

テリ・トゥトベリゼコーチ(中央)から祝福される、金メダルのアリーナ・ザギトワ(左)と銀メダルのエフゲニア・メドベージェワ=23日、江陵アイスアリーナ2018年平昌オリンピックで、エテリ・トゥトベリゼコーチ(中央)が指導したアリーナ・ザギトワ(左)は金メダル、エフゲニア・メドベデワ(右)は銀メダルを獲得した

 3月の埼玉世界選手権で、シニア女子として初の4サルコウを成功させたエリザベータ・トゥルシンバエワも、もともと彼女に師事していた。昨シーズン5年ぶりにブライアン・オーサーからトゥトベリーゼの元に戻って、その9カ月後にいきなり試合で4サルコウを成功させたのである。

 怪我などで若くして引退していく生徒も多くいるため、「容赦なく才能を使い捨てにする」と批判する声もある。だが

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