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水害対応マニュアルと災害大国・日本で必要な備え

台風、豪雨、地震……誰でも災害被害者になる時代を生き抜くための情報と心構え

松山文紀 震災がつなぐ全国ネットワーク事業担当責任者

水害にあったらどうすればいいか

被害状況の画像を撮影

 人は被災すると、直後は何をどうすればいいのか考えつかず、呆然と現実を受け入れざる得ない状況になります。その後、周囲が片付けを始めると慌てて片付けを始めますが、水害からの生活復旧には最低でも1カ月、長ければ半年~1年以上かかります。張り切りすぎると、後で疲れがどっとでるなどの反作用があります。被災された方にはまず、数カ月かかることをお伝えし、焦らずに対応いただくようにアドバイスしています。

 次に、片付けを行う前に被害状況を画像でできるだけ多く撮るようにお伝えしています。被害画像は、住まいの被害を公的に証明する罹災(りさい)証明書の発行や、民間の保険などの申請の際にとても重要になります。

再生できるものとできないものの見極めを

拡大雨で冠水した道路脇にうずたかく積まれた災害ごみ置き場の横を、車が水をかき分けるように通っていた=2019年10月22日、長野市
 画像を撮った後、いよいよ片付けが始まりますが、まずは水没した家財のうち、使えるものと使えないものに分ける必要があります。

 家財には、畳や布団、ソファーやカーペットなど再生が困難なものと、洗浄など適切な対応をすれば再生できるものがあり、そこを見極めることが大切です。思い出の写真などは焦って捨てず、考える時間が持てるようになってから捨てるかどうか考えるモノとして、とりあえず保管しておくことをお勧めします。

床下の状況確認と対応のコツ

 廃棄するものがおおよそ決まり、目に見える部分の泥や土砂の除去が終わったら、床下や壁裏の確認をします。見えるところの片付け・掃除だけでも相当な労力を要するため、見えないところまで手を付ける元気を失いがちですが、見えない部分の対応を放置すると、家そのものを傷めたり、カビの温床になって健康被害につながったりしますので、必ず確認をしてほしいとお伝えしています。

 和室の場合、畳を上げると床板が見えます。床板を外して床下の状況を確認し、水や泥が入っていれば除去します。基礎が土の場合はまだいいのですが、コンクリートが敷いてあるベタ基礎の場合は、強制的に水を抜かないと、水がたまったままの状態になってとても不衛生です。普段、床下を見る機会などないと思いますが、水害後は必ず確認してください。

 和室の下の床板が(合材でない)無垢の木材の場合は再利用することができます。付着した泥等を洗浄し、陰干ししてじっくり乾かします。慌てて天日干しをすると木材が変形する場合がありますので、日陰で干すようにしています。

 床下の基礎以外にも、家の構造物(木の部分)に泥等が付着していることが多いので、そうした泥は拭き取るなどして除去し、少し乾燥させてから消毒するようにしています。消毒には昔から消石灰が多用されてきましたが、取り扱いが難しく、ヤケドの原因にもなるため、いまは医療器具の消毒などに使う逆性石けん(ベンザルコニウム塩化物)を使うようにしています。逆性石けんの代表的な商品は「オスバンS」(日本製薬株式会社)で、最寄りの薬局でも販売されています。

 消毒の後は、とにかく時間をかけて乾燥させるように風通しを良くします。床下には送風機や扇風機で強制的に風を送るようにします。乾燥を待たずに畳を入れると、湿度が下がらずカビの温床となり、健康被害にもつながるため、1カ月ほどかけて乾燥させます。乾燥させている間、家での生活を再開する場合は、転落しないように「生活導線」の確保が必要になります。特に夜間にトイレに行く際の「導線」は、決めておくほうがいいでしょう。

壁の内側にはどう対応するか

 壁の内側ですが、壁の材質が石膏ボードの場合は、廃棄をお勧めします。石膏ボードが水を含むと乾ききる前にカビが発生し、その後もカビが残ります。水に浸かった一番高い位置から20~30cm上まで水を吸い上げることもあるので、早めの除去をお勧めします。

 壁の内部に断熱材を使用している場合は、断熱材を除去しなければなりません。断熱材はスポンジ状のものが多く、一度濡れると乾かすのが難しく、放置すれば断熱材の周囲の建材にも悪影響を与えるので、早期の除去が望ましい対応になります。

応急修理制度にも留意を

 床下や壁裏の乾燥がすんでから本格的な修理となりますが、修理代の一部を代行して支払ってもらえる制度(災害救助法の応急修理制度)などがあるので、修理前に情報を得ておくことが大切です。応急修理制度は現金がもらえるわけではなく、決まった金額を上限とした額が行政から業者に支払われるため、被災された方がお金を払ってしまうと活用できない場合があります。支払う前に役所や役場に相談することをお勧めします。

 修理が済むと、ようやく家財の搬入になり、生活再建完了に近づいてきます。先述したように、被災から生活再建までは数カ月かかるので、焦らずに日常のペースを守って進めることが、心身ともに負担を減らすコツといえます。

拡大水害の被害を受けた住宅から土砂を運び出すボランティアたち=2019年10月20日、宮城県丸森町

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筆者

松山文紀

松山文紀(まつやま・ふみのり) 震災がつなぐ全国ネットワーク事業担当責任者

1972年、静岡市生まれ。1995年、立命館大学4年の1月、京都にて阪神・淡路大震災の揺れを経験。1カ月後に神戸市に入り、以降2年余にわたり復興支援活動に携わる。静岡に戻り1998年に福祉施設に就職。2000年の東海豪雨、2004年の中越地震など、被災地での活動に参加。2009年8月、静岡県ボランティア協会に転職。同年10月開所の静岡市番町市民活動センターに配属。 2011年東日本大震災被災地支援を日本財団と協働で行うため、同年3月末より日本財団災害支援センターに出向。2013年4月より、震災がつなぐ全国ネットワーク(事務局:レスキューストックヤード)の事務局員となり、2019年6月まで事務局長を担当。2019年7月に静岡に戻り現在に至る。