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[34]台東区「路上生活者拒否」の歴史的背景

小田原市の経験に学び、徹底検証と体質改善を

稲葉剛 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

「住所不定者は受け入れない」は台東区災害対策本部の決定だった

 「あじいる」のブログは、その時の状況を以下のように伝えている。

乾パンやタオルと一緒に、忍岡小学校の場所を示す地図のチラシを配り、避難を呼びかけました。
みなさんのところを回り、あと数人というときに、一人の男性が「その小学校に、行ったけど、自分は●●に住民票があるから断られた」と消沈して教えてくださいました。

告知には、住民票についての情報など書かれていませんでした。「身の安全の確保を求めて避難所に行ったのに断られるとは!」…信じられない思いでしたが、その方は仕方なさそうに「ダメだって…」とあきらめたような微笑を浮かべていらっしゃいました。

私たちは、確かめるために、もう一度、忍岡小学校に戻りました。現場の区の職員の方々は、住所の無い人は利用させないようにという命令を受けていました。そこで、その場で台東区長が本部長となる台東区災害対策本部に問い合わせをしました。台東区で野宿をしている人々は避難所を利用できないという規則が本当にあるのか尋ねたところ、「台東区として、ホームレスの避難所利用は断るという決定がなされている」と、明確な返答でした。

すぐに、チラシを配ったエリアに戻り、事情を説明して皆さんに謝りました。中には、「あのあと、すぐに小学校に行ってみたけど、断られた」とおっしゃった方もいました。ずぶぬれに濡れて、私たちの謝罪に「いいよ。ありがとう」と片手をあげて答えていたその姿が脳裏に焼き付いています。

 行政用語で言うところの「住所不定者」を受け入れないという決定は、現場の職員の判断ではなく、台東区災害対策本部としての決定であった。当日、台東区内の避難所で拒否された路上生活者は計3名いたという。

 このことが「あじいる」のTwitterアカウントから発信されると、すぐさま台東区の対応を非難する声がSNS上で沸き上がった。

 台東区議会の秋間洋議員(日本共産党)は、12日当日、台東区災害対策本部に抗議と改善を申し入れたが、区側の回答は「今回は受けられない」、「今回のことを教訓に、次回は対策を講じる」という内容だったとSNSで報告している。台東区の共産党区議団は後日、改めて文書で申し入れを行った。

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筆者

稲葉剛

稲葉剛(いなば・つよし) 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事。認定NPO法人ビッグイシュー基金共同代表、住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人。生活保護問題対策全国会議幹事。 1969年広島県生まれ。1994年より路上生活者の支援活動に関わる。2001年、自立生活サポートセンター・もやいを設立。幅広い生活困窮者への相談・支援活動を展開し、2014年まで理事長を務める。2014年、つくろい東京ファンドを設立し、空き家を活用した低所得者への住宅支援事業に取り組む。著書に『貧困パンデミック』(明石書店)、『閉ざされた扉をこじ開ける』(朝日新書)、『貧困の現場から社会を変える』(堀之内出版)等。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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