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ZOZOからの撤廃が象徴したオンワードの頑固さ

アパレル大手はなぜセレクトショップやZOZOと連携がとれなかったのか

杉浦由美子 ノンフィクションライター

赤字決算発表と大量閉店

 大手アパレル、オンワードホールディングスが今月、3〜8月期の決算発表で、純利益がマイナス244億円の赤字決算を発表した。また、3000店舗のうち約600店舗を閉め、余った人員をネット通販部門に転換すると報道された。ようはリアル店舗縮小と、ネット通販の強化をはかるというわけだ。

 首をかしげざるを得ない。去年の年末にオンワードはネット通販大手『ZOZOTOWN』(以下、ZOZO)から撤退をした。ZOZOが始めた有料会員向けの値引きサービスで主張が折り合わなかったからだ。ネット通販に力を入れたいならばどうしてZOZOから撤退するのだろうか。

拡大オンワードのサイトから
 洋服は大抵試着をしてから買う。それなのになぜネット通販で服を買うか。実はリアル店舗で試着した服を後から欲しくなることがあるからだ。「あー、買っておけばよかった」と思っても、忙しいとそうそう再度、店まで足を運べない。スマートフォンで気軽に注文できたら便利だ。そういう時にアクセスするのは、いつも利用しているZOZOやAmazonといった大手通販サイトではないのだろうか。他のブランドのものも一緒に注文できるし、貯まっているポイントも利用できる。

 しかし、ZOZOにアクセスして、オンワードの服がなかったとしよう。直販サイトがあると知っていても、会員登録をするのが面倒で、買うのを止めてしまう消費者もいるだろう。

ZOZOから撤退したことで失ったものの大きさ

 ZOZOとオンワードが決裂した「値引きサービス」制度。実はこの値下げ分はZOZOが負担する予定だった。つまり、オンワードの懐は少しも痛まなかったのだ。では、なぜ、オンワードは反発したのか。それは勝手に値引きして販売されては、自社製品の付加価値が下がると判断したからだと報じられた。

拡大ZZOTOWNのサイトから
 オンワードの服は百貨店で販売されるため、比較的値段が高い。ファストファッションが低価格帯(1万円以下)で、ハイブランドを高価格帯(10万円以上)とすると、オンワードは中価格帯(1万円以上10万円以下)となるだろう。中価格帯で服を売るとしたら、付加価値は重要だ。付加価値がないものに消費者は1万円札を出さない。

 しかしだ。その価値を守るために、ZOZOから撤退するのは本末転倒ではないだろうか。なぜなら、ZOZOに商品が置かれることが付加価値につながるからだ。先ほどの利便性だけではない。10年以上前に、ネット上で「ZOZOマジック」という言葉があった。無名のブランドがZOZOで扱われると、注目され、人気ブランドになることがしばしば起きたからだ。

 ZOZOは小売店であると同時にファッションメディアだ。現在はなんでも揃う巨大な小売店になったが、それでもメディアとしての意味合いも大きい。商品の見せ方もうまい。同じ商品もamazonで見るよりZOZOで見た方が素敵に感じることも多い。実用的説明的なAmazonと違って、商品を素敵に見せるのがZOZOのやり方だ。

 実際、私はZOZOで見つけた4万円ほどのトートバッグをとても気に入った。4万円の買い物で失敗はしたくない。気に入らなかったら返品したい。Amazonで買えば送料無料になると思い、Amazonにアクセスして同じ商品をチェックすると、買う気が失せたことがある。商品の見せ方が全然違い、到底4万円も出す価値がある商品に見えなかったからだ。

 ZOZOは商品の見せ方がうまく、付加価値を与える。ZOZOという売り場に付加価値があり、そこに商品を出さないと付加価値は下がるのではないか。このZOZOからの撤退騒動では、オンワードの頑固さが垣間見られた。この頑固さは他の場面でも見られるのだ。

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筆者

杉浦由美子

杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター

1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。

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