メインメニューをとばして、このページの本文エリアへ

RSS

結局「大きなイチモツ」を女はどう見るか?

ラブストーリーを盛り上げるリアルな障害

杉浦由美子 ノンフィクションライター

「大きさにこだわるのは男だけだ」

 今年のキングオブコントで優勝したどぶろっくのネタは「大きなイチモツをください」と歌い上げるものだった。「テレビの視聴者の大半は女性なのに、よくも下ネタをやった」と話題になった。どぶろっくのネタの中で、神様が「大きさにこだわるのは男だけだ」と歌う。

拡大岩井志麻子さん
拡大渡辺淳一さん

 この箇所を耳にして思い出すのが、2014年に直木賞作家の渡辺淳一の訃報が流れたワイドショーだ。その番組の中で、山本周五郎賞作家の岩井志麻子が以下のような内容をコメントした。

「小説の中で私が愛人のイチモツを褒め称える描写で〝細長い〟と書いた。それを渡辺淳一先生は〝普通、ぶっといと書くのに斬新だ〟といってくださった」

 以前、私はセックスについて女性たちにインタビューをしていたが、みな「細い」を望んでいた。当たり前だろう。太いと痛いのだから。今回は、「大きなイチモツ」が、女性から見るとどうなのか?ということについて探っていきたい。なぜなら、最近、女性向けの恋愛漫画の中に「大きなイチモツ」がしばしば登場するようになった。これはなんなのだろうか。

拡大どぶろっく

「大きなイチモツ」がコンプレックスになる

 どぶろっくが歌うように「大きさにこだわるのは男だけ」であろう。しかし、長らく男性視点の言説が世間を支配していたために、「大きなイチモツ」は良いものとされてきた。

 これに変化が起きたのは、2000年から放映が始まったドラマ『トリック』(テレビ朝日系)である。主人公の上田次郎はイチモツが大きいことがコンプレックスという設定だった。このあたりから、女性の視点が流通し出す。

 そして、現在、女性向けの人気漫画の中で、「大きなイチモツ」はふたりの恋の障害として描かれる。2018年発行の『ふくらみふくらむ』(水瀬マユ・双葉社)の中では、ヒロインで20代OLの実乃梨には片思いの相手がいる。その彼のコンプレックスは「大きなイチモツ」である。

 彼は初体験をしようとした時に、相手の女性に「そんな大きいのは無理」という風に断られてしまう。それ以来、恋人もできない。ゆえにヒロインとの交際にも消極的だ。どうにかお互いに気持ちを確かめ合い、付き合い出しても、ふたりは物理的になかなかセックスができない。

 ここでは「大きなイチモツ」はふたりの恋愛の障害として描かれる。ラブストーリーは障害がないと盛り上がらない。そのため、古典の時代から、ラブストーリーでは、病気や戦争、身分の格差などを描いてきたが、今の時代、それらは障害として成立しない。大きな戦争も起きないし、医療も発達している。ハリウッドドラマだと貧富の差を描けるが、日本には階層がないからそれは使えない。お嬢様が大学の同級生と恋に落ちても、相手が好青年なら、親も友人たちも反対しない。そんな現代にどうやって障害を作るか。そのひとつの答えが「大きなイチモツ」なのではないか。実にリアルな障害として設置できる。

 実際、取材していた中で、ある女性は恋人のイチモツが自分の手首ぐらいあったために、慣れるまで大変だったと話していた。その口調は嬉しそうにも聞こえた。やはり恋は障害がある方が盛り上がるのだ。

全ジャンルパックなら本の記事が読み放題。


筆者

杉浦由美子

杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター

1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。

杉浦由美子の記事

もっと見る