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上映中止に追い込んだ「自覚なき検閲」

上映中止から一転上映へ。KAWASAKIしんゆり映画祭の舞台裏で起きたこと

石川智也 朝日新聞記者

川崎市の曖昧模糊な「懸念」

 もうひとつの課題は、「懸念」を表明した川崎市の今回の判断と意思決定過程の検証だ。

 オープンマイクイベントで中山代表は、脅迫や嫌がらせ、安全上の問題が上映中止を決めた主因かのように多くの説明を費やしたが、これは問題の本質のすり替えである。

 映画祭事務局は『主戦場』の配給会社「東風」とかねて会場警備について話し合いを重ねてきた。これまで全国50館以上で上映され大きな問題も起きていない。

 事務局の態度が変わったのは8月5日に川崎市市民文化局市民文化振興室から「市の名前が共催に入っている事業で裁判中の作品を上映するのは厳しい、難しい」と連絡が入ってからのことであり、中山代表も「いままで内容に対して口を出されることはなかった。今回初めて『難しい』という言葉を発せられ、重く受け止めなければならないと感じた」と認めている。

 そして、その川崎市市民文化振興室の田中智子・映像のまち推進担当課長は、10月21日の私たちの取材に、次のように答えていた。

 「上映に介入したつもりはございません。裁判になっているものを上映するのはどうかと……。それ以上のことは言っていません。懸念を伝えさせていただき、最終的には主催者が決めたものと考えています」

 「負担金を半分近く出している立場からの『懸念』を、主催者は大きく受けたのではないか」との問いには「……どう受け止めたかどうかは……わかりません」と言葉を濁した。

 主催者への「懸念」伝達は庁内で話し合った結果の、いわば機関決定だったという。

 では誰が最終的に判断の責任を負い、課長らに指示を出したのかと言えば、曖昧模糊としている。

 田中氏の上司にあたる市民文化振興室の山崎浩室長のコメントは「上映作品を選定するのは映画祭の側。市はこれまでも選定に意見を言ったことはないし、今後も言うことはない」という、気の抜けるようなものだった。

 オープンマイクイベントでも、市の職員は(会場のどこかにいたのかもしれないが)決して表には出てこなかった。こうなると、あいちトリエンナーレへの補助金支出に真っ向から反対した河村たかし・名古屋市長が、いっそすがすがしく見えてくる。

拡大映画「主戦場」ポスターの横に立つミキ・デザキ監督=2019年4月4日、東京・丸の内の外国特派員協会

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筆者

石川智也

石川智也(いしかわ・ともや) 朝日新聞記者

1998年、朝日新聞社入社。社会部でメディアや教育、原発など担当した後、特別報道部を経て2021年4月からオピニオン編集部記者、論座編集部員。慶応義塾大学SFC研究所上席所員を経て明治大学ソーシャル・コミュニケーション研究所客員研究員。著書に『さよなら朝日』(柏書房)、共著に『それでも日本人は原発を選んだ』(朝日新聞出版)、『住民投票の総て』(「国民投票/住民投票」情報室)等。ツイッターは@Ishikawa_Tomoya

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