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英軍ラグビーチーム靖国神社訪問の波紋

A級戦犯分祀では解決できない

内田雅敏 弁護士

 このような時代が来るとは思っても見なかった。韓国大法院(最高裁判所)の元徴用工判決を契機として、ますます悪化する日韓関係についてのことではない。9月20日から始まったラグビーワールドカップの話だ。

 日本ラグビー協会代表チーム(以下単に「日本チーム」と云う)が、伝統的ラグビー強豪のアイランドラグビー協会代表チーム、同スコットランドチームに競り勝ち、史上初めて、ベスト8に進んだ。

 これまでにも健闘はあった。しかし健闘と勝利との間には乗り越えなければならない大きな壁があった。ラグビー選手には,3S、すなわち、スピード、スタミナ、ストロングの3つが必要とされる。日本の選手は、世界の選手と比較して、スピード、スタミナにおいてはともかく、ストロングだけは、DNA(体格)的な観点からどうしても太刀打ちできず、それをスピードとスタミナで何とかカバーしようとしてきた。ところが、今回の日本チーム選手はストロングにおいても世界の強豪と堂々と渡り合い、決して当たり負けをしていない。

 本稿は、そのことについて書こうとするものではない。

英軍ラグビーチームの靖国神社訪問

拡大英軍ラグビーチームの靖国訪問を批判する英タイムス紙の報道

 ワールドカップと同じ時期、9月9日から23日まで、日本の防衛省主催の「国際防衛ラグビー競技会」が陸上自衛隊朝霞駐屯地などで行われ、日本の自衛隊や英国軍、ニュージランド国軍など計10チームが各国軍隊代表として競い合った。

 この国際防衛ラグビー競技会、ほとんど話題にもならないが、今回は、ちょっとした「事件」があって、ネット上で話題となった。それは、来日した英軍ラグビーチームが靖国神社を訪れたことから始まった。この事実は、英国軍チームの公式ツイッタ―アカウントが、靖国神社正殿鳥居前に英軍選手たちが整列した記念写真や、神職とのツーショップ写真をアップしたために世に知られることになった。

 喜んだのは、日本の右派だ。[もしやラグビーワールドカップチーム? ラグビーのことは分かりませんが、御参拝有難うございます! まさにノーサイドの精神!さすが紳士の国!]などと言って写真を大拡散した。安倍首相お気に入りの某議員は、[英国軍ラグビーチーム有難う。できれば全参加国軍のラグビーチームにも参拝していただきたいので、靖国神社のことをきちっと紹介して働きかけてみたいと思います]とツイートした。これを安倍支援の某クリニックの院長が、[アメリカのチームにもお願いいたします]とリツイートするなど大はしゃぎだ。9月25日付産経新聞も[第二次世界大戦で戦った英軍のチームの参拝を知った多くの日本国民が感謝している]とやった。

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筆者

内田雅敏

内田雅敏(うちだ・まさとし) 弁護士

1945年生まれ、1975年東京弁護士会登録。日弁連人権擁護委員会委員、同接見交通権確立実行委員会委員長、関東弁護士会連合会憲法問題協議会委員長、西松安野友好基金運営委員会委員長を経て、現在、日弁連憲法委員会委員。通常業務の他に、中国人強制連行・強制労働問題(花岡、西松、三菱マテリアル)など戦後補償問題、靖國問題などに取り組む。著書に『弁護士 ― 法の現場の仕事人』(講談社新書)、『「戦後補償」を考える』(同)、『〈戦後の思考〉―人権・憲法・戦後補償』(れんが書房新社)、『半世紀前からの贈り物』(同)、『戦争が遺したもの』(同 鈴木茂臣氏との共 著)、『憲法9条の復権)(樹花舎)、『敗戦の年に生まれて』(太田出版)、『在日からの手紙』(同 姜尚中氏との共著)、『憲法9条と専守防衛』(梨の木舎 箕輪登氏との共著)、『靖國にはゆかない、戦争にもゆかない』(梨の木舎)『乗っ取り弁護士』(ちくま文庫)、『これが犯罪?「ビラ配りで逮捕」を考える』(岩波ブックレット)、『靖國問題Q&A 特攻記念館で涙を流すだけでよいのでしょうか』(スペース伽耶)など。