二次元と現実の区別がつかない人が現れだした
2019年11月18日
日赤とのコラボキャンペーンで、新宿の献血センターなどに貼られていた「宇崎ちゃんは遊びたい!」のポスター。これに描かれていた、作品のヒロイン宇崎花の造形が「環境型セクハラではないか」「乳袋が性的に誇張されており卑猥である」などとTwitterで騒がれている。
こうしたアニメやマンガ(以下、二次元)のキャラの造形は今までも何度も問題になっているが、今回注目されたのは「乳袋」と言われる表現である。
「乳袋」とは、マンガで巨乳キャラクターを描く際に、巨乳の全裸女性のボディラインどおりに服が存在するかのように描く表現手法である。服を着ているのにもかかわらず、胸の形、特に胸の谷間や下乳のラインが、ビキニでも着ているかのようにハッキリと見えるのが特徴である。
問題になった宇崎ちゃんのポスターの絵も乳袋であると言える。当然、現実の服では、そのような状態はありえないから、極めてマンガ的な表現手法である。他にも胸を頂点に三角形に服が張った状態の「乳テント」や、胸から下に服が垂れ下がる「乳カーテン」なんてのもある。
さて、乳袋という表現を理由の一つとしてこのポスターを問題視する人たちに対し「服を着ているのだからセクハラではない」「乳袋は二次元の表現であり、実在の女性を貶めるものではない」といった批判の声が当然上がった。その流れの中で、今回話題の中心として取り上げる主張があった。
それは、overEやHEART CLOSETといった大きな胸の女性に向けた洋服ブランドを指して「乳袋を作れるブランドがあるのだから、このポスターが卑猥だというのは、そうした女性を卑猥だと言っているのと同じことだ」という主張である。
この主張に対しoverEの公式ツイッターは「当社の製品は「乳袋」という表現とは趣旨の異なるものと認識しております」と発表。HEART CLOSETの公式ツイッターは「性的な意味合いの中で弊ブランド、商品を引き合いに出されることは誠に遺憾に感じております」と発表した。
しかし、ブランドの服を「乳袋」と称した人たちは、そうしたブランド側の反応に不満を抱いているようなのである。
さて、overEやHEART CLOSETの名前を出した人たちは、そもそも何を主張したかったのだろうか。
実在の女性の胸が大きいことと、二次元の絵で乳袋が描かれていること。その最たる違いはなんだろうか。それは実在女性の胸はその状態であるに過ぎないのに対し、二次元の絵は常に意図された存在であるという点である。
写真と絵の最も明確な違いを考えたことはあるだろうか? 写真は自然に存在するあるがままの状態を写しているのに対し、絵というのはすべてが意図的に描かれているという違いだ。
写真を撮影していて通行人が映り込むことはある一方で、絵を描いていたら気づかない間に、別の人が背景に紛れて描かれているなんてことはありえないのである。すなわち、絵に書かれているものは、すべて作者の「意図」によって描かれたものなのである。
すなわち二次元における巨乳キャラクターの存在は「必ず意図されたもの」なのである。いわば「乳袋」というのは、単純に表現技法のことだけを指すのではなく、おのずと
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