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65年ぶり前半4失点の屈辱は兼任の限界か教訓か

森保ジャパン国内最終戦の見方

増島みどり スポーツライター

対ベネズエラ戦の前半、選手を鼓舞する森保一監督

国際Aマッチでは、1954年以来の前半だけの4失点

 2022年W杯カタール大会アジア2次予選で、キルギスに勝利(2-0)し予定通り全勝ターンでグループFの首位に立ったわずか5日後、今度は惨敗にブーイングを浴びる結果となるのだからチームとは分からないものだ。

 11月19日、大阪・パナソニックスタジアム吹田で行われた「キリンチャレンジ杯」で、FIFA(国際サッカー連盟)ランキング28位の日本代表は、同26位のベネズエラに前半だけで4失点と崩れ、1-4で惨敗した。国際Aマッチ(代表戦)の前半だけで4失点を喫したのは、1954年のアジア大会(対インドネシア)以来実に65年ぶりとなる。

 キルギス戦後、ヨーロッパでプレーする9選手がそれぞれ帰国し、先発も同試合から8人変更された。一方で、ベネズエラ戦先発11人全員が、キルギス戦にも選出、またはプレーもしている。トレーニングを共に行っていただけに、「時間がなかった」、「連携不足」、「経験の浅い選手が力を出せなかった」といったお決まりの言い訳が通用しない分、ショックは大きい。

 4バックをベースにするDFラインは、左から長友佑都、吉田麻也、負傷中の冨安健洋、酒井宏樹が欧州に戻り、佐々木翔、畠中慎之輔、室屋成のJリーガー3人とキルギス戦にも先発した植田直通(ベルギーのブルージュ在籍)に変更された。立ち上がりの前半8分、浮足立ったままFW・ロンドンに振り切られて失点すると、同30、33、38分とわずか8分間で3失点とまるで傍観者のような試合展開に。声をあげてチームを鼓舞しようとする選手もいなかった。

 「責任は、準備段階から私の働きかけ(が悪かった)にある。反省しないといけない」

 キルギスから帰国後、U-22の親善試合(対コロンビア、0-2)に直行し、指揮を執ってから大阪に合流した森保一監督(51)は試合後、唇を真一文字に結んでそう答えた。厳しい日程での疲労なのか苦悩か、監督の表情も5日前とは一変していた。

 昨年のW杯ロシア大会をピッチで経験し、現代表では中心となるべきMF柴崎岳、原口元気はともに所属クラブは2部で、それでも出場機会がない。森保ジャパン発足以降「三銃士」の1人として評価をされてきた中島翔哉も、強豪「ポルト」に移籍したが現在出場機会がない。前半で4失点したDF3人はシーズン終盤のJリーグを戦っている。クラブでの立ち位置、日本代表としての存在感、目指す方向性がチグハグなまま、またそれを修正できずに終わった試合に収穫はない。しかし、教訓は見つかる。

大量失点の相手国は南米 アジア以外のサッカーとの距離感

 森保監督は11月、W杯2次予選での全勝ターンと無失点を代表に課し、五輪代表では久保建英、堂安律を呼んで東京五輪金メダルへの本格的な始動と位置付け、ベネズエラ戦は新戦力の発掘を狙った。「2兎」どころか「3兎」を追うような目標設定で、どれも中途半端だった感は否めない。

 例えばベネズエラ戦先発はキルギス戦の出場選手とサブメンバーで固められ、11人中1人も「新顔」がいなかった。最近の監督のコメントは「応援して下さる方々のために勝利を届ける」「皆様のお陰で・・・」と、代表の価値を、「ドーハの悲劇」を経験した自身がよく理解しているとはいえ、同じ内容を繰り返している。監督のこうした「皆様のために」といった守りのコメントは、チームをどこか小さくまとめてしまっている一因に感じられる。

 発足から1年2カ月、ロシアW杯でベルギーとの8強をかけた死闘で稼いだ代表貯金も、底をつく頃だ。

 ホームでの4失点(5失点もある)は、実際にはJリーグが始まった1993年以降、今回も含めホームで7回もある。わずか2年前、

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