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村上春樹はアゴタ・クリストフの夢を見るか?

映画『ドリーミング村上春樹』がひそかな人気。翻訳という営為とは。

石川智也 朝日新聞記者

『ドリーミング村上春樹』

拡大「ドリーミング村上春樹」より©Final Cut for Real
 『ドリーミング村上春樹』という小品映画が、封切り1カ月を過ぎても全国のミニシアターで順次上映を続け、ひそやかな人気を集めている。

 村上春樹作品は世界50以上の言語で出版されているというが、この映画は村上文学をデンマーク語に訳している翻訳家メッテ・ホルムの日常を映したドキュメンタリー。カメラは、村上作品ゆかりの上野駅やデニーズ、芦屋などを訪ねるメッテを追い、彼女がデビュー作『風の歌を聴け』と2作目『1973年のピンボール』を訳し終え村上との対談のステージに向かう場面で終わる。村上本人は一度も登場しない。

 メッテは『風の歌を聴け』の有名な書き出し「完璧な文章などといったものは存在しない。完璧な絶望が存在しないようにね。」にどんな訳語をあてるか極限まで悩み抜くが、このフレーズはエピグラムのように度々登場し、映画全体を貫いている。翻訳家という黒衣の存在にスポットライトを当て、原理的に絶対的な不可能性に対する挑戦とも言える「翻訳」という営みに観る人をいざなう、希少な作品に仕上がっている。

 本作の紹介記事は他サイトにも山ほど出ているので、ちょっと違った視点でアプローチしてみたい。

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筆者

石川智也

石川智也(いしかわ・ともや) 朝日新聞記者

1998年、朝日新聞社入社。社会部でメディアや教育、原発など担当した後、特別報道部を経て2021年4月からオピニオン編集部記者、論座編集部員。慶応義塾大学SFC研究所上席所員を経て明治大学ソーシャル・コミュニケーション研究所客員研究員。著書に『さよなら朝日』(柏書房)、共著に『それでも日本人は原発を選んだ』(朝日新聞出版)、『住民投票の総て』(「国民投票/住民投票」情報室)等。ツイッターは@Ishikawa_Tomoya

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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