ファンはあくまで風景を借りているにすぎないから
2019年12月04日
小山ロールなどで知られる兵庫県の洋菓子店「パティシエ・エス・コヤマ」の店の外観が、12月下旬に発売予定のアダルトゲーム「喫茶ステラと死神の蝶」という作品に使用されているということがわかった。
神戸新聞の記事によると、店側は店舗の外観使用の許可はしておらず、発売後の抗議を検討しているとしていた。この報道を受けて、制作側である「株式会社ユノス」は、ゲームを発売するブランド「ゆずソフト」のサイト上で該当箇所の背景画像をすべて差し替える対応をする旨を発表した。なお、この作業に伴う発売日の変更などは無いという。
まず、明確にしておくべきは、ゆずソフトがゲーム内でエス・コヤマの店舗外観を利用したことは、決して法的にも慣例的にもアウトでは無いということだ。
美術品でない建築物の外観には著作権法は適用されず、またゲームなどの舞台として実在の建物や風景などを利用することはアダルトゲームだけではなく、一般のゲームやマンガでも普通に行われていることである。もし、エス・コヤマの外観が、街の風景として描かれていたり、また主人公とヒロインたちのデートの舞台として描かれているだけなら、それを批判するのは行きすぎであろう。
ただし、今回の場合、エス・コヤマの外観を使用した「喫茶ステラ」はゲームのタイトルにもなっているように、主人公やヒロインが働くメインの舞台として扱われており、お店とゲーム内容の結びつきは非常に強い。主人公やヒロインが働く店なので、当然店内でアレヤコレヤがあることは想像できる。メーカーサンプルとして出回っているスクリーンショットを見るに、店内であろう場所で性的行為をしているものもある。
生菓子を扱うお店なのだから、当然衛生管理に力を入れており、わずかでもこのような混同があることは、当然エス・コヤマにとっては迷惑でしか無いだろう。
エス・コヤマ側は神戸新聞の取材に対して「(制作側に)許可していないということは皆に知ってほしい」と答えており、決して高圧的に批判しているわけではない。なので、問題としてはゆずソフト側が外観を変更することを発表した時点で、なんとか丸く収まったと考えていいだろう。
神戸新聞の記事によると、すでにエス・コヤマに「聖地巡礼」に訪れた人もいるようだ。ゲームは発売前だが、アダルトゲーム専門誌に紹介のスクリーンショットが掲載されており、その外観からエス・コヤマを特定したのだろう。
ゲームやアニメで人気のある作品に使用される舞台は「聖地化」されることがある。昔から、ドラマや映画の撮影場所などを訪れる趣味というのはあったが、近年は聖地巡礼がブームとなり、ネットなどで情報が共有されて、誰でも簡単にモデルとなった場所や建物を特定できるようになった。
聖地の例としては、アニメ「らき☆すた」の聖地と言われるのが、埼玉県久喜市にある鷲宮神社。「ガールズ&パンツァー」(ガルパン)では茨城県の大洗町、「ラブライブ!サンシャイン!!」では静岡県沼津市が聖地と呼ばれ、多くのファンが訪れている。こうした聖地では観光収入の増加が見込まれることから、行政も積極的に動いている。
しかし一方で、聖地化にあまりふさわしくないという場所もある。
例えば
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