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ファンの視線でみる沢尻エリカの逮捕劇への疑問

人並みでない努力をして成功した女優がなぜ薬物ですべてを失ったのか

杉浦由美子 ノンフィクションライター

 女優の沢尻エリカが薬物所持で逮捕された。その余波で来年の大河ドラマ『麒麟がくる』は放送開始が延期だ。沢尻はCMにも出演していたから多額の違約金が発生するといわれている。その額は10億とも報じられている。

 まず、沢尻エリカのファンとして感じるのは悲しさである。沢尻が休業していた時に、私や周囲の女性たちは「復帰してほしい」と熱弁をふるい、それを聞いていたTV関係者が「女の人は沢尻が好きだよなあ。女性からの人気が根強いんだよね」とつぶやいていた。

 なぜ私たちは沢尻エリカが好きだったか。それは実力があるのに、生意気な性格がネックになり、不遇だったからだ。その不器用さに共感をしていた。力もないのに、なにかしらの力で無理に売り出される女優は「ゴリ押し」と嫌われる。その真逆にあるのが沢尻エリカだったように思う。

拡大警視庁東京湾岸署に移送される沢尻エリカ容疑者を乗せた捜査車両=2019年11月16日、東京都江東区

「一流の役者は現場に来る前にすべての仕事を終えている」

 そして、なにより私が沢尻を好きなのは演技が素晴らしいからだ。低い声で、控えめな動きをする。あるハリウッドの映画監督が「一流の役者は撮影現場に来る前にすべての仕事を終えている」と話していた。それは私も取材で人気俳優から聞いたことがある。役者は脚本を読み込み、どういう風に身体や表情を動かすかといった演技の内容を考え、自宅でリハーサルを済ます。現場では用意した内容を披露するだけだ。ようは事前に現場入りする前にやる仕事が多い。

 沢尻もそうしていたはずだ。撮影前に、役を構築し、演技を考え、完璧な状態でカメラの前に立っていた。地道な努力を積み重ねて、休業から復帰し、大河ドラマで重要な役をもらうところまできたのだ。

 今回、沢尻の元交際相手が逮捕されたが、この男と「大河を前に別れた」という記事が少し前に出ていた。仕事に集中するために身辺整理をしたようにも思えた。ファンとして来年の大河ドラマを楽しみにしていた。

 ところがだ。今回の逮捕で大河ドラマどころか、沢尻の演技を二度と見ることができなくなるかもなのだ。ファンとしてこれ以上悲しいことはない。

起用した側には問題はないのか

 また、これは一記者として不思議に思うのだが、沢尻に薬物関連で疑惑があったことはみなが知っていたことではないか。

 2009年に沢尻は前事務所スターダストを解雇されたが、その理由は薬物関連だったことは「週刊文春」で報道されている。その記事の中では、元夫の高城剛がはっきりと彼女が薬物依存だったことを話している。「週刊文春」が掲載するからにはきちんと裏をとっていると、メディア関係者なら承知のはずだ。その彼女がドラマや映画に出演し、CMにも出て、大河ドラマでも大きな役を担う。それを見ていたら、ファンとしては「薬物関連の疑惑はクリアしたんだな。よかった」と考えてしまう。

 ところが今回、逮捕されたとなると、広告代理店や企業、そして、NHKはなぜ薬物関連の疑惑があった女優を起用したのだろうかと思えてくる。むろん、逮捕されたというだけで、有罪が確定したわけではない。敏腕弁護士がついたとも報道されている。ただ、自宅に違法薬物があったのは確かである。沢尻を起用した側に全く落ち度はないのだろうか。

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筆者

杉浦由美子

杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター

1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。

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