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望月衣塑子の質問(完)「強行採決」を巡る攻防

菅官房長官の望月記者への攻撃は国会運営上の言葉の解釈にまで及んだ

臺宏士 フリーランス・ライター

「強行採決」という言葉が気に障った官房長官

 望月記者が触れた11月28日午前での菅長官の発言というのは、朝日記者の「今回の質疑時間で政府としてしっかり十分な説明を果たしたというお考えか」との質問に答えたものだ。

 菅長官は「昨日(27日)の質疑終結、採決。まあ、そういうなかでこの問題点についてはさまざまな点、予算委の集中審議もあってしっかり質問はできたと思います」と述べていた。質問の趣旨は似ているが、大きな違いは「採決の強行」という言葉が質問内容に含まれているか否かだ。

 望月記者が質問した、11月28日の新聞各紙の朝刊の見出しと本文の表現を見てみたい。

 改正案は衆院法務委員会で21日に審議入りし、27日夕に可決され、同日夜、衆院本会議を通過した。安倍首相はアルゼンチン・ブエノスアイレスで開かれる主要20カ国・地域(G20)への参加や、ウルグアイ、パラグアイを訪問するため、11月29日午前に羽田空港から出国の予定があり、28日の参院本会議で安倍首相が出席して改正案を審議入りさせる必要があった。安倍首相の外遊日程から逆算した結果の審議時間だったとも言える。

▽朝日「入管法案 衆院通過 委員会採決強行 審議17時間のみ」=「本会議に先立ち開かれた衆院法務委員会では、与党が野党の反対を押し切って採決を強行」(見出しと本文)
▽毎日「入管法案 衆院通過 委員会審議17時間 与党、採決を強行」=「これに先立つ衆院法務委員会で与党は、慎重審議を求める野党を押し切って採決を強行した」(同)
▽東京「審議わずか15時間 採決強行 入管法改正案 衆院通過 野党『拙速』8党派反対」=「与党などが採決を強行し、改正案を本会議に緊急上程した」(同)

 三紙とも衆院法務委員会で葉梨康弘委員長(自民)を野党議員が取り囲んで抗議するなど騒然としたなかでの採決の写真を掲載した。

拡大テレビ朝日の報道番組「報道ステーション」は、トップニュースで改正入管法の衆院通過を伝えた。テロップには「『外国人労働者拡大』採決を強行」とあった=2018年11月27日。

 テレビの報道番組はどうだったのか。11月27日のTBSの「NEWS23」では、衆院法務委員会の審議の映像を流す際のテロップには「与党からも『問題点出てくる』 “外国人材法案 採決を強行”」とあり、テレビ朝日の「報道ステーション」でも「『外国人労働者拡大』採決を強行」というテロップだった。

 菅長官はよほど「強行採決」という言葉が気に障ったのだろう。

 東京新聞は、望月記者が「強行に採決が行われました」という言葉を使ったことへの抗議に対して、「採決の状況から本紙や他の新聞や通信社も『採決を強行した』と表現していた。それにもかかわらず本紙記者の発言を『事実に反する』と断じており、過剰な反応と言わざるを得ない」と特集紙面で反論した。

 読売と産経の一面記事の主見出しはそろって「入管法改正案 衆院通過」だった。読売は本記では法務委員会での採決そのものに触れず、産経は「衆院法務委で改正案の採決が行われ、自公と維新の賛成多数で可決」としか言及していない。

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筆者

臺宏士

臺宏士(だい・ひろし) フリーランス・ライター

毎日新聞記者をへて現在、メディア総合研究所の研究誌『放送レポート』編集委員。著書に『アベノメディアに抗う』『検証アベノメディア 安倍政権のマスコミ支配』『危ない住基ネット』『個人情報保護法の狙い』。共著に『エロスと「わいせつ」のあいだ 表現と規制の戦後攻防史』『フェイクと憎悪 歪むメディアと民主主義』など。 

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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