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多雨の国・日本

 アジアモンスーン地帯に位置し、脊梁山脈を有するわが国は、多雨の国である。

 かつてより「水を制するものは国を制す」と言う。水は恵みと災いをもたらす。社会の維持には、洪水などを抑制する治水と、水を活用する利水の両面が必要である。現代の水事情を考えてみる。

治水

拡大今年の台風19号で腰の高さまで浸水した宮城県大崎市鹿島台=2019年10月18日

 甚大な被害をもたらした昨年の西日本豪雨や今年の台風19号は記憶に新しい。台風19号では、ダムや堤防などによるハード対策と、適切な避難誘導などのソフト対策の大切さを改めて認識した。

 治水のために、ダム、堤防、護岸、水門、遊水池、放水路などの整備がされ、流路の付け替えや河道浚渫(しゅんせつ)などのハード対策が行われている。大河川の治水は、主に、国土交通省の水管理・国土保全局が担っているが、中小河川は自治体の土木部局が受け持っている。国土強靭化の流れもあり、国管理の大河川のハード対策は進みつつあるが、中小河川の対策は遅れている。

 元来、頻繁に台風や梅雨に見舞われてきた西日本の河川と、雪解け水が中心だった東日本の河川とでは河川の性格が異なる。気候変動で梅雨の範囲が広がり、東日本を台風が襲うようになってきた昨今、従来とは異なる状況にあると感じる。

 260万人もが居住する東京の江東5区(墨田、江東、足立、葛飾、江戸川)のように、天井川に囲まれた場所の問題も大きい。台風19号では、首都外郭放水路が機能して難を逃れたが、江戸川や荒川などが決壊すればほぼ全域が浸水する。

「色」がついた利水

 多くの日本人は、蛇口をひねれば水が出るのは当たり前だと思っているが、水の安定供給にも黄色信号が灯っている。水には用途によって「色」がついている。飲む水、水田で使う水、工場で使う水は、河川などの水源から別々のルートで送られる。家庭などで使った水は、キレイにして川や海に戻される。これらは、上水、農水、工水、下水と呼ばれ、管理主体も異なる。

 先日、日本水道協会の愛知県支部の集まりで、愛知県半田市を訪れた。訪問に当たって、半田市の水事情を調べた。半田市は、酢や日本酒の醸造が有名で、運河周辺に古い倉庫が並ぶ風情ある港町である。過去、安政東海地震、昭和東南海地震や伊勢湾台風など多くの災害にも見舞われてきた。

 驚いたことに、半田市では、上水、農水、工水が、異なる川の水を利用している。上水は長良川の河口堰から取水し、長良導水で知多浄水場まで34km導水し、知多浄水場で浄水した水を、配水池を経由して給水している。農水は、木曽川の牧尾ダムなどの水を岐阜県八百津町にある兼山取水口で取水し、愛知用水で愛知池を経由して届けられる。そして、工業用水は、矢作ダムに貯めた矢作川の水を豊田市の水源で農業用水の明治用水に取水し、安城市内の中井筋で明治用水から工業用水に分岐し、愛知県企業庁が管理する安城浄水場で水をきれいにし、西三河工業用水で届けられている。

 このように、家庭では長良川、水田では木曽川、工場では矢作川の水を使っている。そして、下水は、愛知県衣浦西部流域下水道の衣浦西部浄化センターで処理し、衣浦港に放流している。市役所では上下水道は扱うが、農水と工水には携わっていない。このため、このような状況はあまり認識されていない。

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筆者

福和伸夫

福和伸夫(ふくわ・のぶお) 名古屋大学減災連携研究センター長・教授

1957年に名古屋に生まれ、81年に名古屋大学大学院を修了した後、10年間、民間建設会社にて耐震研究に従事、その後、名古屋大学に異動し、工学部助教授、同先端技術共同研究センター教授、環境学研究科教授を経て、2012年より現職。建築耐震工学や地震工学に関する教育・研究の傍ら、減災活動を実践している。とくに、南海トラフ地震などの巨大災害の軽減のため、地域の産・官・学・民がホンキになり、その総力を結集することで災害を克服するよう、減災連携研究センターの設立、減災館の建設、あいち・なごや強靭化共創センターの創設などに力を注いでいる。

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