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本人・家族の死生観の変化か?「胃ろう」が半減

口から食べる量が減り、自然なかたちで終末を迎える方が増えている

久富護 訪問診療医 医師兼コンサルタント

胃ろう決定までの流れ

 近年、経口摂取ができなくなった際の医療処置の選択について、流れが変わってきているように見える。私は訪問診療医として約6年、それ以前も市中病院で高齢者を対象に診療してきたが、胃ろうによる経腸栄養法や中心静脈栄養法を選択される方が、ご本人の意思・ご家族の意思にかかわらず、非常に少なくなっているのである。

 ここで胃ろう等の選択までの流れを、私自身の経験をもとに説明しておこう。

 訪問診療医として私は、初診時もしくは加齢によりご本人の食事量が減ってきた際に、胃ろう造設等の選択について、ご家族と面談することが通常となっている(本人同席で面談を実施することもある)。ご本人の意向の確認(胃ろう造設等の希望有無の確認)、意向が確認できない場合は、ご家族の思いの確認した後、医療介護チームとともに、どういう選択をするか決定する。もちろん、この決定は絶対ではなく、変更も可能だが、医療的な方針はここで決められた内容をもとにたてる。

 この治療方針を決定する面談の際、胃ろうを選択するご本人やご家族が非常に少なくなってきていると感じているのである。

胃ろう造設が半減

 今回、その実数を調査するために、厚生労働省の公開データ「社会医療診療行為別統計」などを用い、日本における75歳以上人口あたり胃ろう造設数(胃ろう造設術件数)および中心静脈栄養法件数(中心静脈注射用植込型カテーテル設置件数)を調査した。

 2011年から2018年までを調査したが(中心静脈栄養法については2013年から2018年を調査)、結果としては、75歳以上千人あたりの胃ろう造設件数は、2011年の約6.3件/年から徐々に低下し、2016年には2.7件/年まで低下していた。その後、微増し、2018年に約3.1件/年となっていた(なお、実数ベースでは、2011年9万2232件/年、2018年5万5740件/年)。

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 一方、経口摂取が困難になった際の点滴を用いた栄養法の一つである中心静脈栄養法件数は、2013年の約2.0件/年から2018年約1.9件/年とおおよそ横ばいの推移をたどっていた。つまり、「75歳以上の高齢者における胃ろうは半分に減少、中心静脈栄養は微増から横ばいで推移」ということになる。

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 これを数字で見ると、75歳以上の千人あたりの「胃ろう造設数+中心静脈栄養法」は、平成23年度の8.3年/年から平成30年度5.0件/年と減少していた(2011年における中心静脈栄養法件数を2.0件/年で計算)。つまり「経口摂取が困難になっても、医療処置的アプローチをとらずに、食べられる量は少なくなっても経口摂取のままで、死を迎える方が増えてきている」実態が浮かび上がる。

 胃ろうを造設せずに鼻からチューブを入れ、栄養剤を流す経鼻経腸栄養を実施している方もいるため、一概に経口摂取のままで死を迎える方が増えてきていると言いきれない部分もあるが、その数は胃ろうや中心静脈栄養と比較し、多くはないと考えている。

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筆者

久富護

久富護(ひさとみ・まもる) 訪問診療医 医師兼コンサルタント

1977年東京都出身。東京慈恵会医科大学医学部卒業、東京医科歯科大学大学院医療政策学修士、社会医学系専門医、中小企業診断士。医療ビジネスや社会保障に関する研究や活動を通じて、医療・介護領域に対して、多くの課題を感じ、その解決への一翼を担いたいという思いから株式会社メディヴァに医師兼コンサルタントとして参画。また同時に、医療法人社団プラタナス松原アーバンクリニックで訪問診療医として従事。