渋谷のジュンク堂などが撮影した万引き犯の画像を共有、導入3カ月での評価は分かれる
2019年12月20日
万引き犯とにらんだ人物の画像を登録し、入店した際に警戒することなどで万引きを防ごうという取り組みが、東京都渋谷区の3書店で始められた。導入から3カ月間の状況が12月9日にまとめられ、万引き行為を確認した16人(17件)について顔認証データを登録し、このうち3人を取り押さえたという。同じ単行本やコミックが複数冊あるなど転売目的が約半数あった。出版物の売り上げ減と万引き被害に悩む書店が連携した全国初の試みは目を見張るほどの成果にはまだ届いていないが、引き続き運用を続けていくことにしている。
この取り組みは「渋谷書店万引対策共同プロジェクト」。渋谷駅近くにある啓文堂書店渋谷店、大盛堂書店、MARUZEN&ジュンク堂書店渋谷店が7月30日から始めた。万引きや盗撮、器物損壊、暴行・傷害、公然わいせつの犯罪を防ぎ、3店で過去に万引きをしたことが確実な人物の確認・警戒を目的にしている。
同プロジェクト事務局によると、3店舗では以前から店内に監視カメラを据え万引きした人物の画像をそれぞれに所有していた。早い書店では5年ほど前から始めていた。プロジェクトでは7月末以降に万引きが確認された人物の画像を共有、来店時に警戒を強めることにしている。10月31日までに登録した16人については万引きを現場ですべて確認できたわけではなく、撮影後の画像によってわかった例が少なくないという。16人のうち1人は2店舗を訪れていた。
登録した人物が来店するとアラームが鳴って警備担当者に連絡が入り、チェックや声かけをするようになっている。これまで大手書店チェーンなど個別の店舗で同様の仕組みはあったが、地域の複数の書店が顔認証データを共有したことはなかった。
顔の画像を登録した特定の人物を検知し、スムーズに対応できるシステムもつくられている。認知症の人がいる施設では、連絡なしに施設外に出たときにわかるよう玄関に検知システムを置く例があるという。
プロジェクトの阿部信行事務局長は「登録件数は当初の予測よりも少し下回った。ただ店頭の実感としては、万引きが減っている手ごたえはない店舗と、かなり減っているという感触がある店舗に分かれている。プロジェクトの評価を下すのは時期尚早で、登録件数が増えていく中で機能していくと考えている」と話している。
不特定多数が行き交う店頭など場所での顔認証については、ある人物を追跡するような運用が可能になりプライバシーの侵害につながるという反対論がある。
10年ほど前には本にICタグを取り付けレジを通らずに出口に行ったときに検知する仕組みが検討されたが、
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