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本日、『宮本から君へ』助成金不交付を提訴した!

ピエール瀧の出演場面カットを拒んだ私たちへの仕打ちを決して許さない

河村光庸 映画プロデューサー

憲法を軽視し憲法を押しつぶす為政者たち

(1)私たちは本作に対する助成金不交付決定を告げられてから3ヶ月後の9月27日に助成金交付要綱の改定が行われたということを、報道を通して初めて知ることとなりました。つまり、本作はその時点で助成金交付要綱の規定がないのに、「公益性の観点」という曖昧な理由のみで助成金不交付決定がなされたのです。

 たとえ助成金交付要綱が、本作への助成金不交付決定通知書が発行された7月10日の時点で改定されていたとしても、そもそも交付か不交付かの判断にあたって「公益性の観点」というものを考慮することはできないはずですし、また、「公益性」の定義や、「誰が」それを決めるのか、全く不明確で極めて曖昧な要綱改定と言わざるを得ません。

(2)また助成を受けたい人に向けた「募集案内」の内容も同時に変更されました。

 助成対象団体や助成金対象活動に出演するキャスト、又はスタッフ等が犯罪などの重要な違法行為を行った場合には、「公益性の観点」から助成金の交付、内定や決定を取り消すことが出来る、とされています。その意味は、キャスト及びスタッフの中の「一人」が犯罪を起こすと、その罪と作品は全く関係がなくても、作品全体とそれに関わった全ての人々が、その犯罪の連帯責任をとり、助成金内定及び決定の取り消しを受けるということになるのです。

 また「犯罪などの重要な違法行為」とは何を指すのかも、曖昧で不明確と言わざるを得ません。

拡大「i-新聞記者ドキュメント-」(2019年11月15日公開)試写会で、左から森達也監督、望月衣塑子記者、エグゼクティブ・プロデューサー河村光庸氏=東京都千代田区で2019年10月23日、臺宏士撮影

(3)不可解なことはまだあります。今、多くの国では、文化助成は公的価値があり、公金が使われる為、第三者である専門家(文化芸術分野)に助成すべき対象の選別を委ねています。政治家や官僚が文化芸術の評価とは無関係な理由で助成対象の選別に介入する危険を防ぐためです。また助成金は、公金であるが故に、その決定から運用は政治家やその指揮監督を受ける官僚から独立した組織が行わなければならず、その決定プロセスは公にすべきことなのです。

 しかし、「宮本から君へ」への助成金取り消しの決定プロセスにはどうやら、第三者、有識者が加わらずにその「議事録」も残っておらず、意思決定が文化庁と芸文振の独自の判断でなされたと聞き及んでいます。

 追加変更された「交付要綱」(交付内定の取消の規定)や助成金の「募集案内」(犯罪の連帯責任を負わせるような規定)の改定は、日本の文化芸術活動にとって由々しき事態を引き起こす内容だと考えます。

(4)また、本件の不交付決定は、表現内容への直接的介入であることを考えなければなりません。芸文振は「有罪が確定した者」が出演していることを理由として助成金を取り消したことは、「キャスティングという表現内容」に直接手を下した、それは結果として「表現の自由」を侵害したと言わざるを得ないでしょう。

(5)「公益性」とは何なのか。

 その定義が明確にされていないということは、恣意的で一方的、あるいは忖度や同調圧力による判断で、助成金が不交付とされる可能性が高く、「映画製作全体」に対する萎縮、自粛に繋がることは間違いありません。これもまた結果的には憲法が保障する「表現の自由」に対する不当な制約になり得ることは明確です。私たちは、このような忖度や同調圧力による判断、そして「萎縮の連鎖」を止めなければなりません。

 10月30日、改めて文化庁は芸文振の本作への助成金不交付は適切であるとの見解を表明し、官僚組織である文化庁と独立組織であるべき芸文振が一体であることを示しました。一体となった為政者が「表現の自由」への介入を宣言したといえるでしょう。

(6)それと同時に為政者は「公」より「国家」、「公益」より「国益」を重視するという異常な見解を示したとも言えます。「『国』が薬物使用を容認するようなメッセージを発信することになりかねない」とか、「『国』の補助金(原資は税金です)を財源とした助成金を交付することは公益性(国益性では?)の観点から適当ではない」という発言に表れているように、為政者はついに「文化芸術の分野」に対してまで「公=国民」より、「国=国家」を優先させる「国家主義」あるいは「全体主義」をかかげてきたと思わざるを得ません。

 今の為政者は、「公=国民」の代理として為政者を監視し戒める役割の「憲法」を軽視し、関連法の趣旨を都合よく解釈し、「憲法」を押しつぶすことを考えていることが伺えます。

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筆者

河村光庸

河村光庸(かわむら・みつのぶ) 映画プロデューサー

1949年生まれ。94年に青山出版社、98年にアーティストハウスを設立し数々のヒット書籍を手掛ける一方、映画出資にも参画し始め、映画配給会社アーティストフィルムを設立。08年にスターサンズを設立し、『牛の鈴音』、『息もできない』(08)などを配給。エグゼクティヴ・プロデューサーを務めた『かぞくのくに』(11)では藤本賞特別賞を受賞。ほか企画・製作作品に『あゝ、荒野』(16)、『愛しのアイリーン』(18)など。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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