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結局「オールジャパン」ではなかった新国立競技場

新たな歴史に魂は吹き込まれるか

増島みどり スポーツライター

披露されなかったものにこそ、「新」と呼べる価値があるはず

 工事期間中にもヘルメット着用のうえメディア見学会を設け、建設中には3年を通じて進捗状況を定期的に会見で報告するなど、運営・管理にあたる日本スポーツ振興センター(JSC)は情報公開を重んじた。このため15日の内覧会は、これまでも明かされていた大成、梓設計、隈研吾建築都市設計事務所による計画が無事に完了したとする、どちらかといえば報告会のような色合いだった。

 1964年、東京五輪で使用した旧国立競技場との違いは、ただ新しいだけではなく、例えば、時代をどう取り込んでいるかにもあったはずだ。半世紀前との違いは、バリアフリー、災害への備え、最新の警備システム、多様性への対応の4点ではないかと考える。

 新競技場にとって、身体障害者がどれだけストレスなく使用できるか、バリアフリーはどこまで実現できたのだろう。各フロアに身障者と付き添いの見やすい座席があり、総数は500席も設置されているという。

 また「災害の年」と言われた2019年に完成した最先端のスタジアムとして、災害時にどう耐えうる建築物で、発電源の確保、加えて防災拠点としての物資のストックほか防災機能をどう備えているかは重要なテーマだ。

 ロンドンの「ウエンブリースタジアム」が完成した際には、

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筆者

増島みどり

増島みどり(ますじま・みどり) スポーツライター

1961年生まれ。学習院大卒。84年、日刊スポーツ新聞に入社、アマチュアスポーツ、プロ野球・巨人、サッカーなどを担当し、97年からフリー。88年のソウルを皮切りに夏季、冬季の五輪やサッカーW杯、各競技の世界選手権を現地で取材。98年W杯フランス大会に出場した代表選手のインタビューをまとめた『6月の軌跡』(ミズノスポーツライター賞)、中田英寿のドキュメント『In his Times』、近著の『ゆだねて束ねる――ザッケローニの仕事』など著書多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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