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新聞社説から見える「分断」が進んだ令和元年

即位礼、安倍最長政権、女川原発再稼働巡り二分する主張。2020年に求められるのは

徳山喜雄 ジャーナリスト、立正大学教授(ジャーナリズム論、写真論)

拡大2019年5月1日の朝刊各紙(東京本社最終版)

 2019年が暮れようとしている。今年の特大ニュースの一つは「平成」から「令和」へと時代が移り、新たな天皇陛下が5月1日に即位されたことだろう。天皇の生前退位は江戸時代の光格天皇以来202年ぶりという歴史的なことだった。

 政治の世界に目を転じると、安倍晋三首相の通算在職日数が11月20日で計2887日となり、明治・大正期に3度首相を務めた桂太郎氏を抜いて最長となった。記録更新は106年ぶりだ。

 一方、国は原発再稼働を着実に進め、原子力規制委員会は11月の定例会で、宮城県にある東北電力女川原発2号機の再稼働に向け、安全対策をまとめた審査書案を了承した。11年の東日本大震災で大きな被害を受けた岩手、宮城、福島県の3県では初めてとなる。

 国の姿を形づくる天皇制や安倍政権による安全保障、エネルギー・原発政策などをめぐり、「国民の分断」がいっそう進んだ1年でもあった。この分断の背景には、主要各紙の二極化があり、分断・対決型の安倍政治の手法に拍車をかけた。主要な新聞社説を手掛かりに、この1年を振り返るとともに、来る年を展望したい。

保守系、リベラル系メディアが激しく対立

 最初に昨今の日本の言論状況について述べる。東京を拠点として発行する在京紙は6紙ある。保守系が読売、産経、日経新聞で、リベラル系が朝日、毎日、東京新聞だ。この両者の対立がかつてなく激しい。多様な意見があるのはいいことだが、お互いが言いっ放しで聞く耳をもたない不毛な状況がある。

 いつからこのような状況になったのか。短いタームで考えると、2011年の東日本大震災が一つの契機だろう。

 1千年に一度といわれる大津波が発生、福島第1原発が爆発事故を起こし、あわや東日本壊滅といった深刻な事態に発展したのは記憶に新しい。このとき、国論は原発維持と脱原発に二分された。

 保守系は原発存続を唱え、対するリベラル系メディアは原発廃止を訴え、激しい応酬があった。民主党政権時代に事故が発生したが、その後の安倍政権になってからは原発維持が明確に打ち出され、保守系メディアは政権に寄り添った。

 12年12月に発足した第2次安倍政権は、憲法9条の解釈改憲を行い、安全保障政策を180度転換、専守防衛を棄てて集団的自衛権を認めた。ここでも保守系とリベラル系が一歩も譲らずに対立した。14年には朝日新聞が慰安婦関連の記事を一部取り消したことを受け、歴史問題をめぐって保守系が朝日を激しくバッシングした。

 このように、エネルギー・原子力政策、安全保障政策、歴史認識といった国の根幹を形づくる部分での激しい対立が、極端な二極化を促進していったと考えられる。

 「安倍一強」のもと、安倍政権は国会において意見が異なる野党とまともな議論をせずに突き放し、最終的には「数の論理」に頼って強行採決で重要法案を成立させていった。ここに分断・対決型といわれる安倍政治の本質がみられる。対話を拒絶する今日の言論状況と政治状況はまるで双子のように相似形をなし、メディア不信と政治不信が同居することになった。

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筆者

徳山喜雄

徳山喜雄(とくやま・よしお) ジャーナリスト、立正大学教授(ジャーナリズム論、写真論)

1958年大阪生まれ、関西大学法学部卒業。84年朝日新聞入社。写真部次長、アエラ・フォト・ディレクター、ジャーナリスト学校主任研究員などを経て、2016年に退社。新聞社時代は、ベルリンの壁崩壊など一連の東欧革命やソ連邦解体、中国、北朝鮮など共産圏の取材が多かった。著書に『新聞の嘘を見抜く』(平凡社)、『「朝日新聞」問題』『安倍官邸と新聞』(いずれも集英社)、『原爆と写真』(御茶の水書房)、共著に『新聞と戦争』(朝日新聞出版)など。

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