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働き方改革の余波でネットカフェが高級化するわけ

都心からカラオケボックスが減り、「防音鍵付き完全個室」のネットカフェが増える

杉浦由美子 ノンフィクションライター

 2018年6月に成立した働き方改革関連法が今年の4月から本格的に施行される。成立から2年間はお試し期間だったが、どうなのだろうか。確実にいえるのは、カフェの風景が変わったことだ。今回は首都圏のカフェの変化を通して、働き方改革の実際についてみていこう。

ネットカフェの新しいターゲットは

 働き方改革の目的は労働生産性の向上だ。集中して、効率よく仕事をし、残業を減らす。そして、余った時間で十分な休息をとったり、リフレッシュしたりして、仕事の生産性を高めていく。しかし、実際、働き方改革によって、増えたのは、カフェやファミレスのお一人席だ。

拡大黎明期のネットカフェ。個室どころか、隣席との仕切りもまだなかった=2000年12月16日、東京・渋谷

 池袋の駅前のコメダ珈琲に久しぶりにいったが、4人がけのボックス席が減らされ、お一人様席が増えていた。席と席の間には仕切りがあり、電源も用意されている。ひとりで食事をする客のための席というよりは、そこにノートパソコンを持ち込んで仕事をする社会人のためのものだ。黒い画面にプログラムを打ち込んでいるエンジニア、エクセルのデータを睨んでいるスーツ姿の女性、語学のテキストを開いて勉強をしているサラリーマンもいる。

 昔から学生はカフェで勉強をしたが、彼らはお金を落とさなかった。店にとってはありがたい客ではなかった。しかし、社会人が会社帰りにカフェによれば、夕飯も食べてくれるし、珈琲のおかわりもする。珈琲1杯で長話をするグループ客より、店側からしたらメリットがある。

 スタバやタリーズといったコーヒーショップも同じだ。埼玉や東京郊外のスタバやタリーズに入ると、客が黙々とパソコンに向かって仕事をしているから、おしゃべりをしてはいけない雰囲気すらある。カフェはおしゃべりを楽しむところから、仕事をする場所になりつつある。

 だが、飲食店はやはり周囲の音が気になる。話し声がしないとしても、他人がパソコンのキーを打つ音が気になる人も多いだろう。それらを遮断するために、イヤホンで音楽を聴いている人も多いが、イヤホンというのは長時間つけていると耳が痛くなってくる。また、音楽すらない静かな環境の方が仕事ははかどる。お金を多く出してもいいから、静かで集中できる環境で仕事をしたいというニーズに応えているのがネットカフェだ。

 都内の不動産関係者がいう。

 「一昔前に『ネットカフェ難民』という言葉が流行りました。部屋を借りずにネットカフェに住む人たちをさしました。今はシェアハウスやゲストハウスといった手軽に借りられる住居が増えているので、ネットカフェに住む人は減っています。今、ネットカフェがターゲットにしているのはビジネスユースですね。集中して仕事をしたいビジネスマンのために、防音の完全個室を用意しています。カラオケボックスに客がこなくなったので、カラオケボックスが業態をネットカフェに変えているケースもあります」

 池袋にあるネットカフェ『快活CLUB』の看板には「ビジネス&リラックスルーム」とある。鍵付きの防音個室を用意している。集中して仕事をしたいビジネスマンをターゲットにしている。

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筆者

杉浦由美子

杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター

1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。

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