前田和男(まえだ・かずお) 翻訳家・ノンフィクション作家
1947年生まれ。東京大学農学部卒。翻訳家・ノンフィクション作家。著作に『選挙参謀』(太田出版)『民主党政権への伏流』(ポット出版)『男はなぜ化粧をしたがるのか』(集英社新書)『足元の革命』(新潮新書)、訳書にI・ベルイマン『ある結婚の風景』(ヘラルド出版)T・イーグルトン『悪とはなにか』(ビジネス社)など多数。路上観察学会事務局をつとめる。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
25年ぶりに『続・全共闘白書』刊行
昨年5月、「“元全共闘”は半世紀を経ても悔い改めない!?」にて経過報告をした『続・全共闘白書』が年末に刊行された。
かつて日大・東大闘争にはじまる学生たちの反乱「全共闘運動」が全国各地の学園で燃え盛った。それから25年後の1994年、それを中心的に担った「元全共闘」に対して、収入から年金・介護問題、政治・社会制度への問題提起など73項目に及ぶアンケートが実施され、『全共闘白書』(新潮社)として刊行され話題を呼んだが、今回はその続編である。
設問は前回よりも多い75。最終締切りの8月末に寄せられた回答は、120超の大学・高校での全共闘・学園闘争体験者から450超。A5版720ページにも及ぶ歴史的レポートとなった。
着目すべきは、前回に比べて〝思いのたけ〟が濃密に書き込まれていることである。おそらく、50年前、社会の諸制度に対する異議申し立ての運動を起こした全共闘運動経験者も、いまや「後期高齢者」を目前にして、これが〝社会的遺言〟になると自覚してのことだと思われる。
主な設問は以下のとおりである。
・全共闘運動になぜ、どこでどのような形で参加したか/・あの時代に戻れたらもう一度参加するか/・あのとき革命を信じていたか/・運動から離れた理由/・運動参加はその後の人生の役に立っているか/・収入、資産状況。それで生活できているか/・年金はどれくらいもらっているか/・結婚離婚歴/・健康状態/・自身が要介護になったらどうするか/・認知症等で財産管理が不安になったらどうするか/
・延命治療は望むか/・最期をどこで迎えたいか、埋葬先は/・好きな文化言論人・政治家、嫌いな文化言論人・政治家は/・いま最も好きな国は/・いま最も嫌いな国は/・外国人労働者の受け入れは/・憲法、自衛隊、日の丸・君が代はどうすべきか/・支持政党/・民主党政権の評価/・〝平成天皇〟の評価/・トランプの評価/・東京五輪の評価/・どんなボランティアをしているか/・もう一度政治に関わりたいか/・次世代へのメッセージと遺言
今回の『続・全共闘白書』を25年前の『全共闘白書』と重ねあわせると、「元全共闘の実像」が立体的に浮かび上がってくる。75の設問と回答の中から、その例証をいくつかピックアップしてみよう。
問3 参加したことをどう思うか*複数回答
[誇りに思っている]310名(69.5%)
[若気の至りと反省]4名(0.9%)
[懐かしい]57名(12.8%)
[気にしていない]13名(2.9%)
[その他・記述なし]62名(13.9%)
★25年前の回答
[誇りに思っている]296名(56.3%)
[若気の至りと反省]19名(3.6%)
[懐かしい]83名(15.8%)
[気にしていない]37名(7.0%)
[その他・記述なし]138名(25.9%)
問4 あの時代に戻れたらまた参加するか
[また運動に参加する]299名(67.0%)
[しない]10名(2.2%)
[わからない]98名(22.0%)
[その他・記述なし]39名(8.7%)
★25年前の回答
[また運動に参加する]291名(55.3%)
[しない]25名(4.8%)
[わからない]113名(21.5%)
[その他・記述なし]97名(18.4%)
25年前と比べて、「全共闘を誇りに思う」「あの時代に戻れたらまた参加する」がむしろ増えている。一般に人間は年とともに角が取れて丸くなるといわれるが、こと全共闘にはこの「世間の常識」は当てはまらないどころか真逆である。