トップリーグ、スーパーラグビーで世界水準のプレーを間近に見よう
2020年01月20日
日本中が興奮した2019年ラグビーワールドカップ日本大会。紅白歌合戦をはじめ年末年始のテレビ番組でも日本代表選手たちの姿を連日目にした。オールドファンなら、「ラグビーがこんなに注目される日が来るなんて」と感涙にうちふるえたはずだ。
しかし12月といえば、本来ならラグビーはシーズンのまっさかり。例年なら現役選手にはとてもそんな余裕はなかったはずだが、今シーズンのラグビートップリーグはワールドカップの影響で開催時期が大幅にずれこみ、年明け後、1月12日の開幕となった。さらに2月からは南半球の強豪4カ国のクラブチームと競い合う「スーパーラグビー」も始まる。
ラグビーはいったい、いつどこでやっているのか。お目当てのあの選手は、どこで見られるのか。去年までラグビーを知らなかった「にわかファン」のために、2020年のラグビーカレンダーをご紹介しよう。
1月12日に開幕したトップリーグは文字通り国内ラグビーの最高峰。16チームが参加する総当たり戦で、毎週8試合、15節にわたって5月9日まで熱戦が繰りひろげられる。
2019年ワールドカップの日本代表選手31人のうち、29人がトップリーグに所属する。チーム別では稲垣啓太や堀江翔太、福岡堅樹ら6人を擁するパナソニックワイルドナイツが最多。16チーム中、12チームに代表選手がいる。
代表選手が多く出場する序盤の注目カードはまず、第3節1月26日(日曜)の神戸製鋼コベルコスティーラーズ対サントリーサンゴリアス戦(午後1時、ノエビアスタジアム神戸)だろう。昨シーズン2位のサントリーには流大、松島幸太朗ら5人、ディフェンディングチャンピオンの神戸製鋼にも中島イシレリ、ラファエレ ティモシーなど4人の代表選手が所属している。今シーズンの優勝争いの上でも重要なゲームになる。
さらにトップリーグでは日本代表ばかりでなく、文字通りの世界のトップ選手たちもプレーしている。2019年ワールドカップに出場したバリバリの各国代表選手が、なんと18人も加わっているのだ。
国別で最多なのは、準々決勝で日本を破って優勝した南アフリカ代表が7人。ワールドカップの日本戦でも活躍したセンターのダミアン・デエアリエンディ(パナソニック)やフルバックのウィリー・ルルー(トヨタ自動車)は開幕戦から80分フル出場の大活躍を見せた。ニュージーランド代表からは4人。キャプテンのキアラン・リードがトヨタ自動車ヴェルブリッツに加入した。ともに身長2メートルを超える巨人ロックのサム・ホワイトロック(パナソニック)とブロディ・レタリック(神戸製鋼)は、グラウンドでもひときわ目立つはずだ。
論座トークイベント「日本ラグビーの未来を語ろう」参加者募集中
ラグビーワールドカップ日本大会の興奮から2カ月が過ぎ、国内ラグビーは新しいシーズンに入っています。国内最高峰のトップリーグは2020年1月12日に開幕、さらに2月1日から始まるスーパーラグビーでは、日本を拠点とするサンウルブズが南半球の強豪クラブと競い合います。ワールドカップで高まったラグビー人気と関心を一過性のものにさせず、今後も日本代表の活躍を見続けるためには、何が必要なのか。私たちファンには何ができるのか。共に考えていきましょう。日本ラグビー協会理事で法学者の谷口真由美さん、元日本代表の小野澤宏時さん、朝日新聞論説委員(スポーツ担当)の西山良太郎記者が登壇します。
◆開催日時・場所
1月28日(火曜)19時~21時(18時30分開場)
朝日新聞東京本社 本館2階読者ホール(地下鉄大江戸線築地市場駅すぐ上)
◆定員・参加費
定員80人 参加費 1500円
◆申し込みや詳しい内容
Peatixの「論座」のページへ(ここをクリックしてください)
トップリーグは例年は9月にシーズンインして、1月か2月に決勝戦が行われるパターンが多かったが、ラグビーのスケジュールは毎年変動する。昨シーズンはワールドカップ準備のためにシーズンを短縮し、2018年12月15日が決勝戦だった。そして今シーズンの開幕は年が明けた2020年。つまり2019年のワールドカップイヤーには、国内でトップリーグのレギュラーシーズンの試合は1試合も開かれなかったことになる。
かつては大学王者が社会人王者に挑む「日本選手権」がラグビーシーズンの締めくくりとされ、(旧)国立競技場を毎年満員にしていたが、社会人ラグビーがトップリーグに改組されて以降は特に実力差が拡大し、勝敗を争うゲームにはなかなかならなくなってきた。2017~18年シーズンを最後に大学チームの参加枠はなくなっている。
大学ラグビーは、トップリーグ開幕と入れ替わるように、1月11日に決勝戦が行われ早稲田大学が11シーズンぶりに大学日本一となってシーズンを終えた。2017~18年シーズンまで9連覇という前人未到の大記録を打ち立て、ワールドカップ日本代表にも出身大学別で最多の7人を送り込んだ帝京大学は、今シーズンは選手権2回戦で姿を消した。「トップリーグにチャレンジする目標を失い、モチベーションが下がったのではないか」と見る人もいる。じっさい、帝京大は6連覇目の2014年には日本選手権1回戦でNECを破っている。大学生の強化のためにも、大学王者が何らかの形で国内のトップレベルにチャレンジする機会を残してもいいのではないか。
もっとも今シーズン以降の日本選手権がどうなるか、正式な発表はまだない。日本ラグビーフットボール協会は1月15日、現行のトップリーグに代えて2021年秋から新リーグを立ち上げると決定したが詳細はまだ明らかにされておらず、来年以降の年間スケジュールがどうなるかもまだまだ流動的だ。
ニュージーランド、南アフリカ、オーストラリア、アルゼンチンという南半球の強豪国と日本から15のクラブチームが参加する世界でも最高レベルのリーグ戦が「スーパーラグビー」だ。日本を拠点とするサンウルブズは2016年から参戦しており、今年は2月1日(土曜)、福岡市のレベルファイズスタジアムでオーストラリアのレベルズとの開幕戦を迎える。
サンウルブズはもともと日本代表の強化を目的としてつくられたチームで、過去にはリーチや堀江、田村など代表の中心選手もほとんどが所属していたが、今季はトップリーグの開幕がズレて日程が重なったため、日本国内ではプレーしていない外国人選手が中心の構成になっている。
日本からはトップリーグの所属チームを離れて元日本代表の布巻峻介はじめ、谷田部洸太郎、森谷圭介(いずれもパナソニック)らが参加している。注目は大学日本一になった早稲田大学の4年生、スクラムハーフの斎藤直人。2023年のワールドカップパリ大会の代表有力候補が世界でどこまで通用するか、期待大だ。
スーパーラグビーのレギュラーシーズンは16試合。そのうち東京・秩父宮ラグビー場、大阪・花園ラグビー場など国内で開催されるホームゲームは7試合ある。実はサンウルブズのスーパーラグビー参戦は今年限りと既に決まっている。対戦チームのメンバーはいずれも強豪国の代表クラスに近い選手ばかりなので、国内で試合が見られること自体が貴重な機会だ。「見納め」になるかもしれない今年は、後悔しないように足を運んでおきたい。
日本代表が世界で実績を残せなかった時代、強豪国代表相手の試合(テストマッチ)はなかなか組んでもらえなかった。
ワールドカップ2003年大会でフランスやスコットランドを相手に善戦したことが評価され、2004年にはヨーロッパ遠征が実現したが、スコットランドに8-100、ルーマニアに10-25、ウェールズに0-98と記録的な大敗を重ね、以後、トップレベルの強豪国とのテストマッチはさらに困難になってしまった。ワールドカップ1995年大会でニュージーランド代表に喫した17-145の大敗はよく思い出されるが、日本ラグビーの真の底は実はこの時だったのかもしれない。
2007年から11年まで務めたジョン・カーワンHCのもとで、日本代表はワールドカップ本大会を除けば、世界の最強豪国8カ国と1試合もマッチメイクできなかった。流れが変わったのは2012年のエディ・ジョーンズ前HCの就任で、翌年にはウェールズ、スコットランドとのテストマッチが久々に実現した。ワールドカップ2015年大会で南アフリカを破って以降は、完全に日本代表は一人前扱いされるようになり、毎年強豪国相手のテストマッチが可能になっている。
現在発表されている日程では、今年の日本代表はまず6月、ウェールズ代表を迎え撃つ(6月27日、静岡エコパスタジアム)。翌週からはエディ・ジョーンズHC率いるイングランド代表との2連戦が組まれている(7月4日、大分昭和電工ドーム/7月11日、ノエビアスタジアム神戸)。秋シーズンはヨーロッパ遠征で、スコットランド代表戦(11月14日)、アイルランド代表戦(11月21日)が予定されている。
伝統的な強豪国であるこの4カ国との対戦が同じ1年の間に実現するのは、日本ラグビーの歴史上初めて。もはや日本代表自身が「強豪チーム」の仲間入りをしたと言ってまちがいない。
今年はオリンピックイヤーでもある。オリンピック種目としてのラグビーは7人制で、よりスピーディーな展開ラグビーが楽しめる。
初心者がラグビーをみると「団子になってガチャガチャやってる場面が多くて、なにをしてるのかよくわからない」と言うことが、よくある。7人制は少ない人数で15人制と同じグラウンドを使うから、選手1人あたりのスペースが広い。常に選手が走り続けてボールが動き、トリッキーなパスやステップで相手を抜き去る場面も多く、単純に見ていて面白い。試合時間も15人制の40分ハーフに対して7分ハーフ(決勝戦は10分ハーフ)と短い。選手たちの運動量がそれだけ激しいということだ。
7人制ラグビーが初めてオリンピックの正式種目となった2016年リオデジャネイロ大会では、日本代表はニュージーランド代表を破る大金星をあげ4位に入賞している。ただしメダルをとれなかったせいか、あまり注目を浴びることもなく終わってしまった。今回の代表選手の顔ぶれはまだ決まっていないが、1月24日から予定されている合宿メンバーには、15人制代表の福岡堅樹選手も含まれている。福岡選手はトップリーグ第2節の試合を最後に7人制の準備に専念、オリンピック後は15人制代表には復帰せずに医師をめざすと宣言しており、「有終の美」を期待したい。
オリンピックの7人制ラグビーは7月27日から3日間。ワールドカップ日本大会の会場にもなった東京都府中市の東京スタジアムで開催される。
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