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HPVワクチンと名古屋スタディ/上

3万人調査の結果は「子宮頸がんワクチンと接種後の症状に関連はなかった」

鈴木貞夫 名古屋市立大学大学院医学研究科教授(公衆衛生学分野)

「名古屋スタディ」とはなんであったか

 厚生労働省が、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を予防するHPVワクチンの「積極的接種勧奨差し控え」を始めてから6年以上が経過した。時の経過の速さと問題の進捗の遅さには驚きを禁じ得ない。私がHPVワクチンの安全性に関する調査研究(いわゆる「名古屋スタディ」)を名古屋市から依頼されたのが2015年の4月だったので、それからでももう4年以上の月日が経過している。

拡大子宮頸がんのワクチンを打つ女性

 一方で事態は進展していない。今も無料の定期接種対象であることも国民にあまり知られてはおらず、いくつかの動きはあるものの、厚生労働省が今も勧奨を差し控えている現状では1%まで落ちてしまった接種率の向上に結び付くような進展はみられない。

 この項では、「名古屋スタディ」とはなんであったのか、この研究はどういう意味を持つのか、これからHPVワクチン問題はどうなるのかなどについて、「名古屋スタディ」の解析担当者として、できるだけわかりやすく、正確に書き記したい。

 概略を示すと、2015年12月にワクチンと症状に因果関係は認められないという「速報」が出されたが、抗議を受けて16年6月に名古屋市のサイトから削除され、集計結果、生データ、自由記述のみで、解析は削除された。その後、18年2月に「速報」とほぼ同じ内容の論文(Nagoya Study、鈴木論文)が公開された。さらに19年1月に名古屋市の公開した生データを使用した別の論文(八重論文)が公開された。八重論文はHPVワクチンと一部症状との間に関連を認める内容であり、鈴木から論文取り下げの請求が出されたが、出版社は取り下げを行っていない。

 HPVワクチン問題は複雑で、多面的な問題である。私個人は「名古屋スタディ」については、おそらく誰より事情を知っているのでそのことについては詳しく述べるが、その他のこと、例えばワクチンの効果についてなどは、直接の専門ではないため、話はこの範囲内にとどめたい。

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筆者

鈴木貞夫

鈴木貞夫(すずき・さだお) 名古屋市立大学大学院医学研究科教授(公衆衛生学分野)

1960年岐阜県生まれ。名古屋大学医学部卒業、名古屋大学大学院医学研究科博士課程修了(予防医学専攻)、Harvard School of Public Health修士課程修了(疫学方法論専攻)。愛知医科大学講師、Harvard School of Public Health 客員研究員などを経て現職。2006年、日本疫学会奨励賞受賞