3万人調査の結果は「子宮頸がんワクチンと接種後の症状に関連はなかった」
2020年03月14日
厚生労働省が、子宮頸がんの原因となるヒトパピローマウイルス(HPV)の感染を予防するHPVワクチンの「積極的接種勧奨差し控え」を始めてから6年以上が経過した。時の経過の速さと問題の進捗の遅さには驚きを禁じ得ない。私がHPVワクチンの安全性に関する調査研究(いわゆる「名古屋スタディ」)を名古屋市から依頼されたのが2015年の4月だったので、それからでももう4年以上の月日が経過している。
一方で事態は進展していない。今も無料の定期接種対象であることも国民にあまり知られてはおらず、いくつかの動きはあるものの、厚生労働省が今も勧奨を差し控えている現状では1%まで落ちてしまった接種率の向上に結び付くような進展はみられない。
この項では、「名古屋スタディ」とはなんであったのか、この研究はどういう意味を持つのか、これからHPVワクチン問題はどうなるのかなどについて、「名古屋スタディ」の解析担当者として、できるだけわかりやすく、正確に書き記したい。
概略を示すと、2015年12月にワクチンと症状に因果関係は認められないという「速報」が出されたが、抗議を受けて16年6月に名古屋市のサイトから削除され、集計結果、生データ、自由記述のみで、解析は削除された。その後、18年2月に「速報」とほぼ同じ内容の論文(Nagoya Study、鈴木論文)が公開された。さらに19年1月に名古屋市の公開した生データを使用した別の論文(八重論文)が公開された。八重論文はHPVワクチンと一部症状との間に関連を認める内容であり、鈴木から論文取り下げの請求が出されたが、出版社は取り下げを行っていない。
HPVワクチン問題は複雑で、多面的な問題である。私個人は「名古屋スタディ」については、おそらく誰より事情を知っているのでそのことについては詳しく述べるが、その他のこと、例えばワクチンの効果についてなどは、直接の専門ではないため、話はこの範囲内にとどめたい。
すでに述べた通り、私がこの件に関わりだしたのが2015年4月なので、それ以前のことは事後に聞いたり調べたりしたものである。
時系列では、2010年10月に名古屋市独自事業でHPVワクチン全額助成が開始され、2013年4月、予防接種法に基づく定期接種になった。しかし、その頃から
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