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HPVワクチンと名古屋スタディ/下

3万人調査の結果は「子宮頸がんワクチンと接種後の症状に関連はなかった」

鈴木貞夫 名古屋市立大学大学院医学研究科教授(公衆衛生学分野)

HPVワクチンと名古屋スタディ/上

名古屋スタディ論文の反響

 2018年2月に、「名古屋スタディ」の論文が出版された(注1)。その後、国内の学術誌からの依頼原稿や医学系のネットなどからの取材が数件ずつあった。また、日本癌学会、日本産婦人科学会、日本小児科学会、日本癌治療学会などからの講演やシンポジストの依頼、医師会や各地の勉強会からの招聘など、数多くの反響があった一方で、テレビは2局(うち、放送されたのは1局)と少なく、新聞に至っては取材すらゼロであった。

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 ただ、こちらから情報を発信するときに、講演会などでもらった新聞記者の名刺のアドレスにも送ることがあり、時々個人的に真摯な内容のメッセージを返してくれる場合もある。それから推測すると、記者個人の考えと新聞社の姿勢にはかなりの乖離があること、記者個人が従来の新聞の報道姿勢を疑問視しており、現在の状況のマスコミの責任は重いと考えていることなどが分かり、将来に少し光が見えるようにも思う。今回の「論座」への寄稿もその1つであり、これが何らかの突破口になることを心から望んでいる。

名古屋スタディに反対する薬害オンブズパースン会議

 論文出版は速報、本報告に続き、名古屋からの3回目の発信になる。関連について言及しなかった本報を除き、速報、論文では関連が認められないことを発表したが、薬害オンブズパースン会議(以下、会議)からは、その都度「見解」が寄せられている。

 また、私の目に届くところでの反論は、会議とその関係者からしか出されていない。論文出版後については、18年6月11日に見解(注2)を発表した。これは科学論文やレターではないため、学術的な意味では私に回答する必要はない。しかし、これは会議の公式な名前による見解であり、これに答えないことは黙認したことになるという危惧もあり、18年8月8日付で回答(注3)を公開した。

 会議はこの回答に対しても、翌2019年2月8日に見解(注4)を発表している。前回述べた「交絡を調整しない構造的問題」について、「24症状の中から都合の良い1症状だけを抜き出して年齢調整の妥当性を主張するもので、きわめて不当である」と述べており、この1症状において単変量解析オッズ比は誤りで、年齢調整オッズ比が正しいことを会議自らが認めている。

 もちろん、この例を含むすべてで、年齢調整オッズ比が正しいことは前回述べた通りである。年齢調整における会議の主張は論理性に欠け、「とにかく反論すればいい」というものになっている。こういう内容のものが公開され、特に批判も受けていない現状を憂えるばかりである。

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筆者

鈴木貞夫

鈴木貞夫(すずき・さだお) 名古屋市立大学大学院医学研究科教授(公衆衛生学分野)

1960年岐阜県生まれ。名古屋大学医学部卒業、名古屋大学大学院医学研究科博士課程修了(予防医学専攻)、Harvard School of Public Health修士課程修了(疫学方法論専攻)。愛知医科大学講師、Harvard School of Public Health 客員研究員などを経て現職。2006年、日本疫学会奨励賞受賞