杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター
1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
売り上げ1億の若手女優の年収が1000万円 大手企業の社員も同じ構図
昨今、大物タレントの独立が目立つ。特に注目すべきはジャニーズ事務所のタレントたちの動向だろう。
昨年の秋には錦戸亮がジャニーズから独立し、その直後から積極的に音楽活動をしている。渋谷駅前に大きな広告を出し、広告のトレーラーも町を動き回り、大がかりなプロモーションをし、年末に発売されたソロアルバム『NOMAD』は初週7.6万枚を売り上げ、オリコンチャート1位を獲得した。錦戸と親交がある赤西仁は中国のドラマに出演して以来、海外での仕事が増え、年収が3億とも報じられる。
彼らの独立後の活躍が報じられるとともに、日本の芸能事務所に対して「ブラックだ」という批判も高まっている。
芸能事務所のタレントへの支払いは歩合制と固定制がある。前者の場合は大抵事務所が50%、タレントが50%という取り分になる。この場合、なにかしらの理由で働けなくなると収入はゼロに近くなる。
しかし、固定給ならちゃんと収入が保証される。矢口真理が不倫騒動で干された時も年収1000万円以上あったという。売れっ子時代もたぶんその額だったのだろう。ようは固定給で契約をすると、サラリーマン同様い収入が安定するのだ。
日本のタレントはサラリーマンということは、ハリウッドとの比較記事でも指摘された。ハリウッドの俳優は事務所に所属せず個人で活動をする。そのため自由度は高い。日本のようにバーター出演はなく、小さな役でもオーディションで選ぶから誰しもチャンスがある。
しかし、「ハリウッド型システム賛美」の意見を疑問視する声もある。東洋経済オンライン(2019年12月21日配信)で、映画ジャーナリストの猿渡由紀が『赤西仁「年収3億円報道」の裏にある厳しい現実』という記事を書いている。
「日本の芸能人がサラリーマンなら、ハリウッドの俳優は自営業者。自営業には、会社に守られていない苦労がある。経費は自分で払わなくてはならないし、客がこなければ生活は破綻する」
事務所に所属しなくてもエージェントと契約をしたり、マネージャーを雇ったりするからそちらへの支払いが生じるし、また、弁護士や広報担当を雇えばさらに出費は増える。
そして、なにかトラブルに巻き込まれた時に差が出るだろう。薬物所持で逮捕された沢尻エリカの担当弁護士として、日本を代表する刑事事件の弁護士が起用された。敏腕弁護士はなにかしらのコネクションがないと依頼ができない。芸能事務所に所属していれば、そういったことも手配してもらえる。また、復帰するとしたら、組織の力が重要となる。事務所が「二度と問題を起こさないようにうちが保証します」といって、営業をかけるから復帰ができるのだから。
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