生き生きした大人が幸せな子どもと持続可能な社会をうみだす
2020年01月27日
2019年度を振り返ってみると、元号は令和になり、目新しい言葉が並ぶ新しい教育に向けて進展し、働き方も変わっていく年だと思っていましたが、実際には暗雲が立ち込めた一年だったかもしれません。
まず、昨年9月にOECDの発表した教育への公的支出が、日本は35カ国中最下位というニュースを見て、やっぱりなとガッカリしたことを思い出します。2016年の初等教育から高等教育の公的支出が国内総生産(GDP)に占める割合が、日本は2.9%と35カ国中最下位だったのです。
OECDの平均は4.0%で、ノルウェーが6.3%、フィンランドが5.4%、ベルギーが5.3%、スウェーデンが5.2%と続いています。OECD事務総長のアンヘル・グリア氏は、「若者が、予測不能で変化し続ける世界で生きていくために必要な知識と技能を身に付けることが、かつてないほど重要になっている。我々は、機会を拡大し、将来のスキルニーズへの橋渡しを強化して、あらゆる学生が社会で自分の場所を見つけ、その能力を最大限発揮できるようにしなければならない」と述べています。
アンヘル・グリア氏が言われる若者の中には、もちろん日本の若者も含まれているはずです。日本だけが、グローバル人材の育成という掛け声だけで、実際には教育は二の次、三の次…ということでいいのでしょうか。教育費は未来への投資とも言われてきました。このままだと日本の未来はどうなるのでしょう。
1月20日の安倍晋三首相の施政方針演説での教育・子育てに関する内容は約42分のうち約1分30秒だったそうです。時間の問題じゃないという方もいるかもしれませんが、時間も問題です。力を入れていることには時間を割いて伝えるわけですから、教育・子育てへの思いは薄いのではないかと思ってしまいます。
安倍首相が演説の中で教育について触れられたのは、「Society5.0の時代にあって、教育の在り方も、変わらなければならない。本年から小学校でプログラミング教育を開始する。4年以内に、全ての小学生、中学生に対して1人1台のIT端末をそろえる。企業エンジニアなど多様な外部人材を登用することで、新しい時代の教育改革を進める」という部分だけです。
確かにおっしゃる通りですが、教育改革はそれだけではないですし、プログラミング教育やIT端末を整備することが目的ではありません。新しい教育には、SDGsの達成にも貢献する持続可能な社会の創り手を育むという大きな目標があります。新しい学習指導要領には、その実現のために、様々な教育の在り方や手法まで示されているのです。
また、教育活動を充実させるための学校の働き方から考えると、一学級の児童生徒の人数を減らす、教員や補助教員の人数を増やす、週当たりの授業時数や一日の授業時数を減らす、学ぶ場としての学校の施設の改善、働く場としての職員室の改善、個別最適化に対応した教室の在り方、学年や教科の枠組みの見直し等々、大きな制度改革によって教育の在り方を変えていく必要があります。そのためには教育への公的支出が少なすぎるのだと思います。
Society5.0の時代、VUCAの時代に、たくましく・しなやかに「生きる力」「生き抜く力」を育むことができるのは教育です。安倍首相の演説の【子育て支援】で「子どもたちの未来に、引き続き、大胆に投資してまいります。」と表明されています。是非とも、教育に、教育現場に目を向けて、子ども達の未来への投資を優先させていただくことを強く願います。
そんな中、文科省は1月16日に、いじめ・不登校などの課題解決策や、教師間ハラスメントの対策を考える「魅力ある学校づくり検討チーム」を新たに設置し、初会合を開きました。このチームが検討するのは
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