西山良太郎(にしやま・りょうたろう) 朝日新聞論説委員
1984年朝日新聞社入社。西部(福岡)、大阪、東京の各本社でスポーツを担当。大相撲やプロ野球、ラグビーなどのほか、夏冬の五輪を取材してきた。現在はスポーツの社説を中心に執筆。高校では野球部、大学時代はラグビー部員。
※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです
浦和高校の洗練にしびれ、大学は早明決勝に目を見張る
宴のあとの寂寥感といえばいいのか。
ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会で初のベスト8進出を達成し、連日のようにテレビの情報番組やバラエティー番組に出演する日本代表の選手たちをみて、「努力が報われてよかった」と拍手を送る一方で「W杯ロス」を抱えた人も多かったはず。
しかし、楕円球であいた心の風穴を埋めてくれるのは楕円球しかない。
そう実感させてくれたのは、私の場合、年末年始に花園ラグビー場(大阪府東大阪市)で開催された全国高校ラグビー大会(12月27日~1月7日)だった。
大会は、今回で99回目を迎えた。一昨年、一足先に100回に届いた高校野球の夏の甲子園とほぼ同じ長さを経てきた大会だ。1世紀という時間と歴史の重みを感じる。
大会の前半で目を奪われたのは、6年ぶり3度目の出場を果たした埼玉の浦和だった。
何よりグラウンドに広がる15人全員が戦略のイメージを共有し、流れるように動いていく。その一体感と集中力にしびれた。
1回戦は岡山の玉島に5―0で花園初勝利をあげた。相手に得点を許さずに押し切った試合には、緊張感がみなぎり、観る者にまばたきを許さないような張り詰めた空気があった。続く2回戦は青森山田に33―28。試合の流れを読み、相手の反撃をしのいで勝ち切った。
浦和は公立では有数の進学校だ。その文武両道ぶりを少し掘り下げると、ラグビーで全国大会2勝の意義が見えてくる。
例えば、部員は50人ほどいるが、ほとんどは高校入学後にラグビーを始めた選手ばかりだという。野球やサッカー、バスケットやバレーといった競技で全国大会に出てくるレベルではほとんど考えられないことだ。
メンバーは身長170センチ台、体重も80キロ台が大半を占める。個人で相手を圧倒できるような大型選手はいない。
もともと高校生は、年齢によって体の成長には差が大きく、ケガのリスクも他の競技に比べれば高い。公立校なので練習時間も決して長くはない。
このような決して容易ではない環境でも、洗練された15人のチームプレーを練り上げることができる。高校生が持つ可能性と、その能力を引き出していく指導者の懐の深さを実感するチームだった。
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