臺宏士(だい・ひろし) フリーランス・ライター
毎日新聞記者をへて現在、メディア総合研究所の研究誌『放送レポート』編集委員。著書に『アベノメディアに抗う』『検証アベノメディア 安倍政権のマスコミ支配』『危ない住基ネット』『個人情報保護法の狙い』。共著に『エロスと「わいせつ」のあいだ 表現と規制の戦後攻防史』『フェイクと憎悪 歪むメディアと民主主義』など。
望月衣塑子の質問・番外編
1月29日午前の記者会見。中国・武漢を中心に広がりを見せる新型コロナウイルスによる肺炎について政府が前日(28日)に感染症法に基づく「指定感染症」と、検疫法の「検疫感染症」に指定したこともあり、このときの菅長官への質問は、新型コロナウイルス問題に集中した。
口火を切ったのは、共同通信記者。朝日、NHK、産経、日本テレビ、時事通信と6人の質問が続いた。菅長官が7人目の質問を受けようとする直前、司会進行役を務める上村秀紀・官邸報道室長がいつものように注意を喚起した。
「次の質問、最後でお願いします。このあと国会日程ありますので」
菅長官が7人目の質問者に指名したのは、時事通信の別の記者だった。菅長官が質問に答えると、幹事社の記者が「よろしいですか」と会見参加者に呼びかけた。すると、間髪置かずに上村室長が「はい、ありがとうございます」と記者会見の終了を宣言したのだった。
その間、およそ10分。
望月記者は「あります! 1問」とはっきりとした声で呼びかけたが、顧みられることはなかった。
彼女の声は幹事社の記者の耳に届いたはずだ。「幹事社の記者は望月さんが声を上げたのでびびっていた」という情報もある。
望月記者は同日午後の記者会見でも指名されることはなかった。
幹事社の対応は、その1週間前に大きく変わったのだ。
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