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タワーマンションはなぜ嫌われるのか

武蔵小杉の災害被害が「ざまあみろ」と煽られ、報道でも話題になるわけ

杉浦由美子 ノンフィクションライター

 昨年、台風19号で、武蔵小杉のタワーマンションが浸水被害にあい、エレベーターやトイレが使えなくなった。この被害は大きく注目を集めた。もっと深刻な被害もあったのに、どうして、タワーマンションの被害だけがクローズアップされたのか。また、この武蔵小杉での被害に関連して、タワーマンション批判的な視点の記事も目立つようになった。

 なぜ、タワーマンションや武蔵小杉の街の存在感に、ここまで関心が集まるのか。

拡大昨年の台風19号で水位が上昇した多摩川と武蔵小杉のタワーマンション=2019年10月12日、東京都大田区

昭和の時代は「田園調布に家が建つ」 今はタワマン?

 数年前に取材で田園調布(東京都大田区)に行った時のことだ。駅から徒歩圏内は庶民的な風景が拡がっていた。建て売りのこぢんまりとした一軒家や賃貸マンションが並ぶのだ。新興住宅地といってもいい雰囲気だった。

 私が子供の頃にみた田園調布とは違う風景だった。その様子を旧財閥系の大手不動産会社の社員に話すと、「昭和の時代は田園調布に家を建てるのがステイタスだったけれど、今、新興の金持ちはあの街には流れてこないでしょう。今、ステイタスなのは都心のタワーマンションに住むことですから」とのことだった。

 結果、今、田園調布に移り住むのは、〝都心への通勤が便利なわりに不動産相場が安い〟と考える普通のサラリーマンやその家族だという。

タワーマンションはなぜ勝ち組の象徴なのか

 「タワーマンションに住むのがステイタス」。そういう通説があるのは確かだ。たとえば、お笑い芸人は「売れっ子になって、タワーマンションに住んで、自分に酔ってみたい」と冗談交じりにインタビューに答える。

 だが、タワーマンションは本来、利便性のいい場所にたくさん部屋を作り、1戸の分譲価格を安く抑えようとして作られたものだ。ようは便利な場所にあるわりには安いのが魅力なわけだ。

 低層マンションは戸数が少ない分、価格も資産価値も高いから、ステイタスを感じるようにも思える。
女優の菊池桃子と結婚した経済産業省の官僚は原宿の低層マンションを所有していると報じられ、底値の8000万円で買い、現在の実売価格は1億2000万円だそうだ。

 こちらの方がなんだか勝ち組感があると感じるのは私だけではないだろう。大勢の人が「タワーマンションに住むこと=勝ち組」という通説に疑問を持っているのではないか。しかし、そういう疑問を持たずに、本気でタワーマンションに住むことにステイタス感を持っている層はいるのだ。

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筆者

杉浦由美子

杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター

1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。

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