「安定した皇位継承」は強制と裏表、当事者の思いをどうくみとるのか
2020年02月27日
「愛子天皇」
週刊誌やネットメディアで、よく目にする言葉です。
天皇家の⻑⼥である愛⼦さまが、将来、天皇になることを想定した⽂脈で語られていることが多いようです。
皇位を継ぐ男性皇族が先細りする中、各メディアの世論調査では、⼥性天皇や、⺟⽅だけに天皇の⾎を引く⼥系天皇を、新たに認めるべきだとする声は 7 割前後とほぼ一貫して⾼い⽀持を得ています。
一方、安倍政権は、⽗⽅に天皇家の⾎を引く男系で皇位をつないできた伝統を重視、⼥性天皇、⼥系天皇には後ろ向きのようです。
男系の維持か、それとも女性、女系の容認か。皇位継承の議論では、これが一番の論点であることは確かですが、これとは別に気になることもあります。
「親として、いろいろと考えることもありますが、それ以上の発言は控えたいと思います」
今から15年前、小泉政権時代の2005年秋に、女性、女系天皇を認める有識者の報告書がまとめられました。この発言は、その直後の06年2月、当時皇太子だった天皇陛下が誕生日会見で、この報告書についての質問に答えたものです。
親として、いろいろと考えることーー。
当時、愛子さまは4歳。⾃⾝より年下の男⼦皇族は、 5 歳違いの弟の秋篠宮さましかいませんでした。安定的な皇位継承のために⼥性、⼥系天皇を認める報告書の意義を⼗分認識しつつ、⼀⽅で、⼀⼈の娘の幸せを願う父親の思い。世継ぎ問題の重圧などで体調を崩していた雅⼦さまも、どんな気持ちだったでしょうか。
この報告書は、皇位継承順位について、天皇の直系を優先し、かつ男⼥に関係なく⽣まれた順とすることが適切だとしました。報告書通りに皇室典範が改正されれば、皇太⼦さまに続く皇位継承者は、愛⼦さまになります。「愛⼦天皇」がにわかに現実味を帯びました。
しかし、事態は急転します。
秋篠宮家に第三⼦懐妊が明らかになり、報告書に基づく法案の国会提出は直前で見送られます。
結婚後は皇族の⾝分を離れるはずの⾃分の娘が、⼀転して天皇になるかもしれない。そう思ったとたん、また元に戻る……。その人生が、⼀つの法律にほんろうされてしまう。 そういう⽴場に⽣まれたとはいえ、ずいぶんと酷な話です。
そして、何より気になるのは、当事者である女性皇族たちの思いです。
現在、独身の女性皇族は6人います。
女性、女系天皇が認められると、確かに数の上では皇位継承権者は現状に比べて格段に増えます。ただ、それだけで必ずしも安定性が確実に保たれる、というわけでもありません。
全くの妄想ですが、年頃のある女性皇族が、突然こんな思いを公表したとします。
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