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新型肺炎で「隠ぺい」中国を批判できない「様子見」日本(下)

新型肺炎の過度な軽視、過剰反応をしないために中国の実態や最新研究を認識すべき

浦上早苗 経済ジャーナリスト、法政大学MBA実務家講師、英語・中国語翻訳者

拡大colnihko/shutterstock.com

 「新型肺炎で『隠ぺい』中国を批判できない『様子見』日本(上)」に引き続き、新型コロナウイルス感染の“発生地”中国の実態と最新の研究結果について述べる。

湖北省で患者数が急増しているワケ

 武漢市を含む湖北省では、2月に入って毎日2000~3000人台のペースで感染者が増え続けている。ただ、この数字をもって、単純に「感染が拡大している」とはいえない。数字を増やす幾つかの要因があるからだ。

 1月20日の専門家委員会で専門家の一人は、数日間「新規感染者ゼロ」が続いた後、急に感染者と死者が増え始めた理由の一つとして、「検査体制の非効率」を挙げている。新型肺炎の検査で陽性と判定されても、最終判断をするのは中央政府だったので、確定診断の発表が遅れたことが影響したというのだ。

 だが、その後、陽性と判定された時点で地方政府が発表できる体制に改められたので、これからは迅速に実情が反映されていくという。

 まだ、当初は検査キットが十分に行き渡っておらず、医師や病床などの“医療資源”も追い付かずに、症状が出た大量の患者が放置されていたという事情もある。専門家はこの点に触れ、「検査や診療の流れが迅速化すれば、当然ながら患者数は増える」と語った。

医療体制の強化が進む武漢市

 中国政府はいま、武漢市の医療体制強化を強力に進める。1月25日には重症患者を収容する2つの病院の建設に着工。“超突貫工事”を経て、「火神山医院」が2月4日から、もう一つの「雷神山医院」も8日から患者の受け入れを始めた。2病院が収容できるのは約2500人。既存の3病院も新型肺炎重症患者の専用施設とするべく、改装やICUの拡充を急いでいる。

 2月7日には、市内のエキシビジョンセンター、体育館、大規模ホールの3施設を「コンテナ病院」に転用。数千人の収容が可能になった。さらに公共施設の「コンテナ病院」への転用も進めている。病院に行っても診察までに相当の時間がかかるため、家で療養している人も多いと伝えられたが、2月8日には1日に最大1万人を検査できる「火眼ラボ」の運用を始めた。

 武漢市当局は依然、医療資源が不足していると訴えるが、この1週間で体制が相当に拡充されており、2月9日時点で3万人近くいる「新型肺炎の疑いがある患者」の確定診断が一気に進む可能性は高い。事実、2月4日以降、「疑いがある患者」の増加ペースには歯止めがかかっている。


筆者

浦上早苗

浦上早苗(うらがみ・さなえ) 経済ジャーナリスト、法政大学MBA実務家講師、英語・中国語翻訳者

早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学(経営学)および少数民族向けの大学で講師の職に就き6年滞在。新聞社退職した時点でメディアとは縁が切れたつもりで、2016年の帰国後は東京五輪ボランティア目指し、通訳案内士と日本語教師の資格取得をしましたが、色々あって再びメディアの世界にてゆらゆらと漂っています。市原悦子演じる家政婦のように、他人以上身内未満の位置から事象を眺めるのが趣味。未婚の母歴13年、42歳にして子連れ初婚。最新刊「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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