路上生活する人とペットとの絆を考える
2020年02月19日
ここに一枚の写真がある。
大きな犬が実に安心したようすで、主人の荷物を守り彼の帰りを待っている。
次の写真を見ればわかるように、この犬の飼い主はアメリカ・西海岸のホームレスだ。犬の飼い主はこの日、彼の相棒のドッグフード代のためにスーパーで携帯電話を売らなければならなかったが、それでも犬は実によく手入れされていて、幸せそうに見える。
実はこの写真を撮った写真家でジャーナリストでもあるユージーン・フィッシャー(Eugene Fisher)もホームレスだ。彼もまたイングリッシュブルドッグと秋田犬の混じった大型犬カリーと暮らし、ホームレスの人々と、彼らのペットの生活をテーマに路上で制作活動をしている。
知人に紹介されて、私はユージーンとメールでやりとりするようになった。
彼は自分とカリーとの関係をこんなふうに説明する。
「僕はカリーを所有しているんじゃなくて、カリーが僕に特別な優先権をくれているんだ。僕は彼の兄貴だね」
彼の人生に何があったのか?
プライベートに立ち入ったことは知らないが、もともとプロの写真家で、禅の仏教徒である彼は、出版界の縮小と身体的な病気のために、20年近くシリコンバレーとロスでホームレス生活を続けているのだという。一時期写真を完全に辞めて、デジタルな絵画制作をしていたが、ある週末に4人のホームレスの人たちが低体温症で一度に死亡したのをきっかけに、突然再び写真家になった。
彼は今、シリコンバレーのホームレスをテーマにしたフォトエッセイの出版を計画している。彼によれば、世界で最も裕福な郡であるシリコンバレーには9000人近くのホームレスがいるという。
ユージーン・フィッシャー(Eugene Fisher)
ユージーン・フィッシャーは、13歳から50年間プロの写真家として活動し続けている。彼の自然、人類学をテーマにした写真は、The National Geographic Society、Smithsonian magazine、GEO Germany、Paris Matchなどで出版されている。また、その作品は、スミソニアン協会、カナダの国立博物館、オタワのThe Canadian Museum of Civilizationを含む30以上の主要な博物館で展示されている。彼の主なライフプロジェクトは、カナダ北東部のイヌイットやインドネシアのボルネオ島のペナンなど、地球上の最後の狩猟採集文化を記録することだった。彼は現在、カリフォルニアのホームレスに関するドキュメンタリー作品とシュールなデジタル絵画に時間を割いている。
ユージーンの犬カリーももちろんだが、彼の話によれば、彼の撮っている他の動物たちも極めてよく世話されていて、飼い主たちは、自分の食べ物がない時でも、しばしばドッグフードを買うという。そして、メールでこう言っていた。
「犬の立場からすると、ホームレスでいるのは素晴らしいこと。家や庭に1日10時間放置されることはないしね。果てしない新しい匂い、新しい人々、新しい他の犬、たくさんの散歩、たくさんの日光。そして、もし運が良ければ、そして腕がよければ、リスやガチョウを食べられるかもしれない」
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