萎縮・忖度の時代に「自由の気風」を~「宮本から君へ」助成金不交付訴訟を題材に
2020年02月24日
Choose Life Projectとは、テレビの報道番組やドキュメンタリーを制作しているディレクターや映画監督など有志が集まり、2016年から始めた映像プロジェクトです。
普段はテレビの報道現場で日々ニュースを伝える仕事をしているのですが、「健全な民主主義に資する(放送法第一条)」役割が求められているはずのテレビに、大袈裟に言えば「限界を感じた」ことが、このプロジェクトを始めたきっかけです。
TBSの報道番組でキャスターを務めた故・筑紫哲也さんは「一つの『論』の専制が起きる時、失われるのは自由の気風」と話していました。
いまこそこの言葉の意味を考えたいと、今月から「表現の自由を考える」プロジェクトを立ち上げました。
その中でも特にいま、私たちが注目しているのが、映画「宮本から君へ」の助成金不交付問題です。
今年に入って数々の映画賞を受賞している池松壮亮さん主演の映画「宮本から君へ」。しかし去年、文化庁所管の日本芸術文化振興会(以下:芸文振)がこの映画の助成金の不交付を突如決定しました。
理由は、麻薬取締法違反で有罪判決を受けたピエール瀧さんの出演です。
「公益性の観点から」“助成金を交付することができない”とする芸文振に対して、制作会社の「スターサンズ」が、憲法で保障されている「表現の自由」への侵害にあたると主張し、提訴しました。2月25日に東京地裁で裁判が始まります。
この裁判の行方を私たち「Choose Life Project」は注目しています。
なぜ提訴したのか? 公益性の観点とは何か?
そもそも憲法で保障されている「表現の自由」とは何なのか。
映画「宮本から君へ」「新聞記者」の映画プロデューサー・河村光庸氏はこの訴訟に至る経緯について、「論座」に『助成金不交付~官僚とメデイアに広がる同調圧力』『本日、「宮本から君へ」助成金不交付を提訴した!』『映画「宮本から君へ」の裁判を目前に「様子見」のメディアの皆様へ』を執筆しています。
弁護団長を務めるのは、文化芸術活動の関連法を専門としている四宮隆史弁護士。一票の格差訴訟や安保法制訴訟などの憲法訴訟を多く手がけ、憲法の専門家として著名な伊藤真弁護士も弁護団に加わっています。
「Choose Life Project」は訴訟が始まるにあたり、河村氏と四宮、伊藤の両弁護士の対談を企画しました。
対談で、河村氏は違憲訴訟の難しさを認識しつつも「『憲法』は為政者から私たち国民を守るためにある。(このような考え方を)『映画』という切り口で到達させたい」と強調しています。四宮弁護士は「今回の問題は社会を“萎縮させる”効果がある」と指摘し、伊藤弁護士は「(芸文振が主張する)『公益性の観点』というあいまいな基準で規制するからこそ、ますます社会が萎縮していく。大きな問題だ」と語っています。
「Choose Life Project」はこの対談の様子をユーチューブ(動画はこちら)で伝えています。以下は2分20秒にまとめたダイジェスト版です。ぜひご覧下さい。
このほかにも今回のプロジェクトでは文化人や著名人のコメント動画をネット上で公開しています。
俳優・古舘寛治(動画はこちら)
映画監督・白石和彌(動画はこちら)
今後も随時、こうした表現者の声をご紹介しながら「自由の気風」が保てる社会を目指していきます。
「Choose Life Project」Youtubeチャンネル
「Choose Life Project」Facebook
「Choose Life Project」Twitter
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