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美味しいから勧めたい!発酵食をめぐる旅―その1

人生100年時代の旅の愉しみ【2】群馬の納豆、生ハム、チーズ、焼きまんじゅう

沓掛博光 旅行ジャーナリスト

 先月の朝日新聞に「納豆1日1パック 死亡リスク10%減」(朝日新聞デジタル1月30日)という記事がでていた。納豆やみそなど発酵性大豆を原料とした食品をたくさん食べる人は、そううでない人と比較して死亡率が10%低くなるということが、国立がん研究センターの調査で判明したと伝えている。巷間言われる、「納豆や味噌は体にいいんだってね」ということが、科学的な調査によって証明されたと言えるだろう。
 日本各地には大豆を原料としたもののほかにも、様々な材料を使った発酵食品がある。旅先でそうした食べ物に出合うと、美味しくて体にいいからという理由だけでなく、風土と伝統に培われた逸品だけに、一口含むと無言のうちに訪れた土地の個性が伝わってくるような気分になる。
 今回の「人生100年時代の旅の愉しみ」では、そんな気分にさせられた各地で出会った発酵食品と場所を幾つか紹介しよう。まずは群馬県から――。

スローシティ前橋は発酵食品のまち

 2月の群馬県は、この時期の“名物”の空っ風が、赤城山から広い関東平野に向けて吹き抜けていく。その赤城山のふもとにある群馬県の県都前橋市は発酵食品のまちでもある。

 意外と知られていないが、前橋市は2017年にスローシティ国際連盟に加盟した。地域の食や農産物、生活・文化、自然、多様性などを尊重する新しい町づくりを目指しており、多種にわたる発酵食品はこの町にふさわしい観光資源とも言える。

 前橋市の郊外、赤城山南麓は、昔から大豆や小麦作り、それに養蚕が盛んな土地柄であり、製糸業が衰退した後は、養豚、酪農などに引き継がれていった。農水省の「作物統計」によれば前橋市の2015年の小麦の収穫量は5550トン、大豆90トン。共に県内第1位を占め、農業生産が豊かな土地柄であることを示している。

 そうした農業の基盤があったうえで、発酵を活用した食品作りが広まっていったのではないかと推測されている。

 山麓近くには納豆工場があり、生ハムの工房があり、チーズを製造する牧場がある。市内中心部には、群馬県人なら誰もが子供のころから食べている郷土の味、焼きまんじゅうの老舗もある。

 いずれも発酵の力を利用して作られる食べ物であり、前橋の味でもある。代々受け継がれた味から、近年取り組んで生まれたものまでバリエーションに富んでいるのも、前橋の発酵食品の特色になっている。

 前橋のまちは、県都でありながら自然が豊か。JR両毛線の前橋駅から県庁近くまでは、ケヤキの並木が約1.5キロ続き、今は葉を落としているが、春の新緑や夏の緑陰にはなかなかの風情を見せる。

 都会地において、こうして長い並木道が続くところは残念ながら日本では少なく、この道を歩くたびに、「前橋に来た」という実感を強くする。

 その先には、利根川から引いた用水である広瀬川が勢いよく流れる。川辺近くには前橋が生んだ詩人・萩原朔太郎の記念館や前橋文学館などが立ち、周囲に枝を広げる木々と共に、“水と緑と詩のまち 前橋”を彷彿とさせる情景が続く。

拡大例年4月上旬から咲き出す赤城南面千本桜と菜の花

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筆者

沓掛博光

沓掛博光(くつかけ・ひろみつ) 旅行ジャーナリスト

1946年 東京生まれ。早稲田大学卒。旅行読売出版社で月刊誌「旅行読売」の企画・取材・執筆にたずさわり、国内外を巡る。1981年 には、「魅力のコートダジュール」で、フランス政府観光局よりフランス・ルポルタージュ賞受賞。情報版編集長、取締役編集部長兼月刊「旅行読売」編集長などを歴任し、2006年に退任。07年3月まで旅行読売出版社編集顧問。1996年より2016年2月までTBSラジオ「大沢悠里のゆうゆうワイド」旅キャスター。16年4月よりTBSラジオ「コンシェルジュ沓掛博光の旅しま専科」パーソナリィティ―に就任。19年2月より東京FM「ブルーオーシャン」で「しなの旅」旅キャスター。著書に「観光福祉論」(ミネルヴァ書房)など

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