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[38]ギャンブル依存症と貧困の深い関係が明らかに

ホームレス状態の当事者121人への聞き取り調査から

稲葉剛 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

拡大大阪府と大阪市が開いた、ギャンブル依存症についてのセミナー=大阪市阿倍野区
 新型コロナウイルスの市中感染が始まりつつある。

 私の関わっている複数の生活困窮者支援団体でも、予定していた催しの中止を相次ぎ決定した。また、路上生活者や生活保護利用者にマスクや予防を呼びかけるチラシを配布するなどの対策を講じている。

 新型肺炎は、高齢者や持病のある人が罹患すると重症化しやすいと言われている。近年、路上生活者の平均年齢は60歳を超えており、70代、80代の高齢者が野宿をしている例も少なくない。生活保護世帯も、高齢者が世帯主となっている世帯が全体の約54%を占めている。両者とも慢性的な疾患を抱えている人の割合が高いという特徴もあり、新型肺炎に特に気をつけなければならない人たちが多い集団だと言えよう。

 現在、私たちは医療関係者と連携をしながら、こうした社会的に脆弱な層への対策をどう進めていくか、検討を進めているところである。この問題については、機を改めて論じたいと思う。

 連載「貧困の現場から」が朝日新書になりました

 本稿では、貧困と密接な関連のある別の疾患について考えてみたい。それは、ギャンブル依存症である。

 ギャンブル依存症(ギャンブル障害)とは、ギャンブルにのめりこむことにより日常生活又は社会生活に支障が生じ、治療を必要とする状態になっていることを指す疾患名である。

 2017年に厚生労働省が発表したギャンブル依存症に関する疫学調査(中間結果)では、生涯で依存症が疑われる状態になったことのある人は3.6%(全国約320万人)と推計されている。

 2016年に成立した統合型リゾート(IR)整備推進法に基づき、政府は2020年代半ばにカジノを含むIRを国内最大3カ所で開設する方針を示している。IR推進法の成立にあたっては衆議院・参議院の両院にて「ギャンブル等依存症患者への対策を抜本的に強化すること」という趣旨の付帯決議が付され、2018年にはギャンブル等依存症対策基本法が施行された。

 厚生労働省は今年4月からギャンブル依存症の治療にも公的医療保険を適用できるよう診療報酬を改定する予定で、対策に力を入れている。


筆者

稲葉剛

稲葉剛(いなば・つよし) 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事。認定NPO法人ビッグイシュー基金共同代表、住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人。生活保護問題対策全国会議幹事。 1969年広島県生まれ。1994年より路上生活者の支援活動に関わる。2001年、自立生活サポートセンター・もやいを設立。幅広い生活困窮者への相談・支援活動を展開し、2014年まで理事長を務める。2014年、つくろい東京ファンドを設立し、空き家を活用した低所得者への住宅支援事業に取り組む。著書に『貧困パンデミック』(明石書店)、『閉ざされた扉をこじ開ける』(朝日新書)、『貧困の現場から社会を変える』(堀之内出版)等。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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