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[38]ギャンブル依存症と貧困の深い関係が明らかに

ホームレス状態の当事者121人への聞き取り調査から

稲葉剛 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

売血で得た金でパチンコ繰り返す

 私は長年の生活困窮者支援活動の中で、ギャンブル依存症によって貧困に陥ったと見られる人に数多く出会ってきた。

 20年ほど前に関わった高齢の女性は、生活費や家賃に充てるべきお金をパチンコに使ってしまうため、友人や知人から毎月のように借金をするという行動を繰り返していた。最終的に人間関係が破綻をして、失踪。ホームレス状態になって発見される、ということも一度や二度ではなかった。

 アパートから出て、路上生活をしている彼女を私が発見した時、彼女は自分ではパチンコの誘惑には勝てないと涙ながらに語り、「パチンコのない国に行きたい」とつぶやいていた。

 約半世紀の間、パチンコ屋に通ってきたという元ホームレスの男性からは、若い頃、売血をして得たお金でパチンコをしていた、という話を聞いたことがある。

 日本における売血制度は、貧困層が売血を頻繁に繰り返すことによって赤血球が回復せず、血液が黄色っぽくなる「黄色い血」問題が1960年代に社会問題となり、1974年には国内の全ての輸血用血液が献血由来のものに切り替わった。

 しかし、後に薬害エイズ事件で知られることになるミドリ十字は、1990年まで血漿分画製剤用として有償による血液の採取を続けていたため、事実上の売血制度は続いていた。

 この男性は、1980年代、東京都内の複数のミドリ十字の営業所を偽名で渡り歩き、売血をしてはパチンコ屋に行くということを繰り返していたという。

 「当時は牛乳瓶くらいの量の血を1本4000円で買ってくれました。2本抜くとフラフラになるのですが、その状態でパチンコ屋に行き、お金がなくなったら、今度は別の営業所に行く。こっちでは田中さん、あっちでは鈴木さんと名前を変えて行くんです。体重は50㎏以上ないと血を抜いてくれないので、ズボンのポケットに石ころを入れてごまかす。そうやって得たお金で、パチンコやスロットをしていました。1日に4、5万使うこともありました」

ギャンブル依存症とホームレス問題で初の詳細な聞き取り調査

 ギャンブル依存症と貧困、特にホームレス問題との関連は、支援者の間では以前からよく知られていたが、それを裏付ける本格的な調査は実施されたことがなかった。この点に日本で初めて踏み込んだのは、認定NPO法人ビッグイシュー基金の研究グループが実施した聞き取り調査である。

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筆者

稲葉剛

稲葉剛(いなば・つよし) 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事。住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人。生活保護問題対策全国会議幹事。 1969年広島県生まれ。1994年より路上生活者の支援活動に関わる。2001年、自立生活サポートセンター・もやいを設立。幅広い生活困窮者への相談・支援活動を展開し、2014年まで理事長を務める。2014年、つくろい東京ファンドを設立し、空き家を活用した低所得者への住宅支援事業に取り組む。著書に『貧困の現場から社会を変える』(堀之内出版)、『鵺の鳴く夜を正しく恐れるために』(エディマン/新宿書房)、『生活保護から考える』(岩波新書)等。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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