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新型コロナウイルスをメディアは的確に報道しているか

確かに分量は多い。だが、読者や視聴者の疑問に十分に答えているかは疑問

徳山喜雄 ジャーナリスト、立正大学教授(ジャーナリズム論、写真論)

「一斉休校」の舞台裏を報じた朝日新聞

 「独断」「場当たり的」「後手後手」「説明不足」「肩透かし」……。

 ここにきて、こうした言葉が、ニュース番組のコメンテーターらの発言や新聞・雑誌の見出しで、乱れ飛ぶようになった。

 臨時休校の判断をめぐり、安倍首相と最側近である萩生田光一文部科学相との不協和音も聞こえてくる。

 全国一斉の休校という首相の意向を伝え聞いた萩生田氏は2月27日、首相の真意をただすために急きょ官邸に向かった。休校によって保護者が仕事を休まなければならない世帯への「休業補償はどうなるのか」と迫る萩生田氏に、首相の“腹心”である経済産業省出身の今井尚哉首相補佐官らは「大丈夫」と応じた。ただ、国民生活への影響が大きいだけに、萩生田氏は「補償の問題をクリア出来ないと春休みの前倒しは出来ない」と食い下がり、安倍首相が最終的に「こちらが責任を持つ」といい、その場を引き取ることとなった。

 それから約5時間後の新型コロナウイルス感染症対策本部の会合で、首相は一斉休校の要請に踏み切った。専門家会議にもかけず、反対意見を突っぱねるかたちの極めて短時間の決定で、政権の危機管理を担ってきた菅義偉官房長官も蚊帳の外だった。

 以上の首相官邸での出来事を、朝日新聞(2月29日朝刊)は生々しく報じている。朝日は近頃、舞台裏でのこうしたやりとりを書いておらず、目を引いた。誰がリークしたかは判然としないが、「朝日に情報は流すな」という箝口令(かんこうれい)にほころびがでてきたということか。

拡大閣議後、取材に応じる萩生田光一文科相=2020年3月3日、国会内

各紙の記事から漂う政権末期の気配

 東京新聞は、首相の独断を伝える朝日報道を追いかけるかたちで、全国一律の1カ月におよぶ長期の休校案への萩生田氏の抵抗を伝え、「首相側近は『うだうだ議論したって仕方ない』と吐き捨てた」(3月2日朝刊)と報じた。

 毎日新聞のコラム「風知草」(3月2日朝刊)も、「はっきり言えば、首相は今井尚哉・首相補佐官の進言を重く見たのだ――と朝日新聞は書いている」と引用したうえで、「私の取材では、補佐官はじめ側近が準備した資料には、09年新型インフルエンザの際、大阪と兵庫で実施した小中高校一斉休校の記録のほか、スペインかぜなど過去のパンデミックの分析もはいっていた」と述べている。

 これらの報道で注目したいのは、

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筆者

徳山喜雄

徳山喜雄(とくやま・よしお) ジャーナリスト、立正大学教授(ジャーナリズム論、写真論)

1958年大阪生まれ、関西大学法学部卒業。84年朝日新聞入社。写真部次長、アエラ・フォト・ディレクター、ジャーナリスト学校主任研究員などを経て、2016年に退社。新聞社時代は、ベルリンの壁崩壊など一連の東欧革命やソ連邦解体、中国、北朝鮮など共産圏の取材が多かった。著書に『新聞の嘘を見抜く』(平凡社)、『「朝日新聞」問題』『安倍官邸と新聞』(いずれも集英社)、『原爆と写真』(御茶の水書房)、共著に『新聞と戦争』(朝日新聞出版)など。

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