新型コロナで1月にイベント中止・テレワーク決めた企業の危機管理
測定できないリスクには、“ベストシナリオ”より最大限の警戒であたる
浦上早苗 経済ジャーナリスト、法政大学MBA実務家講師、英語・中国語翻訳者
出張先のオーストラリアで深刻さを認識
「測定できないリスクに対しては、ベストシナリオを考える必要はなく、最大限の警戒であたるべきです」
そう話すのは、オーディオブックを配信するオトバンクの久保田裕也社長だ。同社は従来から「出社自由」だったが、1月27日に原則として「全社テレワーク」に切り替えた。
久保田社長は1月下旬、出張でオーストラリアを訪れた際に、周囲にいた中国人の会話から、新型肺炎の深刻さを感じ取った。
中国は当時、武漢市が封鎖された直後で、感染が他都市に飛び火しつつあった。中国人の切迫した雰囲気に自分でも情報を集め、「どうなるか読み切れない。最大限の警戒をする必要がある」と感じ、26日に全社員に「午前7時から午前10時まで全従業員が電車通勤回避」「不要な出社を控え、基本的に在宅勤務を実施」と通知、非常時モードに入るよう求めた。
同社はオーディオブックを制作しており、社員は収録のために社内のスタジオを使うこともある。もし午前中に作業をしたいなら、朝のラッシュを避けて7時前に出社し、その日は午後3時までに退社するルールだ。受付には1月時点でアルコール消毒液とサージカルマスクを設置した。
非常時モードに切り替えて1カ月が過ぎた。久保田社長も今はオンラインで大半の業務をこなしている。

インタビューに応えるオトバンクの久保田社長(左)=2020年2月19日、筆者撮影
イベント中止に納得できない人も多い?
中国を視察した世界保健機関(WHO)の報告によると、集団感染の75~85%が家族感染で、家族の誰かがウイルスを家庭に持ち込み、一家に広がる傾向が鮮明となっている。
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