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ドラマ『女子高生の無駄づかい』にみる女子高の楽しさとリスク

欠点があっても「キャラ」として受け入れられる、スクールカーストなき楽園生活

杉浦由美子 ノンフィクションライター

 以前、週刊誌から「なぜ、女子アナは女子高出身者が多いのか」というテーマで取材を受けたことがある。確かに女子アナには女子高出身者が多いのだ。

 写真集も絶好調のフリーアナウンサー田中みな実は、「恥を知れ」が校訓の大妻中学高等学校出身、テレビ朝日の人気アナウンサー弘中綾香は 慶応義塾女子高等学校出身、『あさチャン!』(TBS系)のMCで、フリーアナウンサーの夏目三久は同志社女子中学高等学校出身。あげていくと切りがない。女子高の割合は全体の10%以下で少数なのに、なぜ、女子アナの多くは女子高出身なのか。いろんな要因があるが、私は高校時代にJK扱いされなかったことにあるのではと推測している。

 1990年代の女子高生ブーム以来、高校時代は最も女として値段が高い時期とされている。JKビジネスが流行するのも、そこに客がいるからだ。

 しかしだ。女子高の生徒は基本的にJKとしてチヤホヤされる経験をしない。異性から隔離されて過ごすからだ。男子校との合コンに参加するのはごく一部であり、大半の生徒は異性とはほとんど接しないで過ごす。また、校則が厳しかったり、宿題や課題が多かったりして、街に出て遊ぶ機会も少ない。そのため、フラストレーションを強める女子も一定数は発生する。JK的なキラキラとは、ほど遠い高校生活を送ったために、一見、華やかそうにみえる女子アナという職業に憧れるのではないか。高校時代からリア充であれば、メディアに出ようとは思わないようにも推測できよう。

JKとはほど遠い非キラキラ生活

拡大テレビドラマ『女子高生の無駄づかい』

 しかし、一方で、女子高の非キラキラ生活を楽しめる女子生徒も沢山いる。その様子を描いたのが『女子高生の無駄づかい』(KADOKAWA・ビーノ)という作品だ。去年、アニメ化し、今期はテレビ朝日系、金曜ナイトドラマとして実写化された。原作ファンからはドラマに対して賛否両論が出ているが、実に原作のテーマを体現したものだったと思う。

 この作品の登場人物はみなあだ名で呼ばれる。ヒロインは岡田結実演じる田中望は、空気が読めないお馬鹿キャラであり、「バカ」と呼ばれている。その「バカ」は冒頭でこういう。「うちらってさ、今がピークなんじゃない?」「女子高生という最大の武器を持つ今が最強で今頑張らないとこの先一生彼氏とか出来ないんじゃない?」。それに対して、同級生に「すげぇー、頭悪そう」と一蹴される。

 従来の少女漫画はヒロインが女子高生として輝くために、恋におしゃれに邁進した。ライトノベルなどでは部活を頑張って青春を充実したものにしようとする女子高生も描かれる。ようは一度しかない女子高生という時期をキラキラしたものにしようとする。

 しかしだ。この『女子高生の無駄つがい』はその真逆にいく。中堅の女子高で、女子生徒たちは、端的にいうと馬鹿なことばかりして過ごすのだ。そんなキラキラ感がない話がなぜ人気を博すかというと、それがとてつもなく、楽しそうだからだ。

 登場する女子高生はみな個性的で、公立中学では人間関係に苦労した子もいる。そのひとりひとりにヒロイン「バカ」はあだ名をつけて、キャラ化していく。表情がなく無愛想な秀才は「ロボ」、妄想ばかり語る中二病女子は「ヤマイ」、漫画家志望者は「ヲタ」、女の子大好きな美少女は「リリィ」。ようはどんな変わり者でも、キャラとして消化され、存在を認めてもらえる。結果、不登校のオカルトマニアの生徒も、「マジョ」というあだ名をつけられたことで、学校に通えるようになる。

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筆者

杉浦由美子

杉浦由美子(すぎうら・ゆみこ) ノンフィクションライター

1970年生まれ。日本大学農獣医学部(現・生物資源科学部)卒業後、会社員や派遣社員などを経て、メタローグ社主催の「書評道場」に投稿していた文章が編集者の目にとまり、2005年から執筆活動を開始。『AERA』『婦人公論』『VOICE』『文藝春秋』などの総合誌でルポルタージュ記事を書き、『腐女子化する世界』『女子校力』『ママの世界はいつも戦争』など単著は現在12冊。

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