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マラソン界初の選考法MGC約3年で全て終了、真価は五輪本番で判明

国内最高、日本歴代4位で代表を決めた 一山の恐るべきノックアウトパンチ

増島みどり スポーツライター

拡大国内最高記録をマークし東京五輪代表に内定した一山麻緒=2020年3月8日、名古屋市東区、代表撮影

 新型コロナウイルスの影響で出場選手が100人ほどに縮小された名古屋ウィメンズマラソンは3月8日、女子五輪代表最後の1枠をかけて行われ、一山麻緒(いちやま・まお、22=ワコール)が日本歴代4位、日本国内レースで最高タイムの2時間20分29秒、加えて名古屋で7年ぶりの日本人優勝と、パーフェクトレースで東京五輪最後の代表となった。日本陸連はのちに、この記録を「女子単独レースの日本新記録」と発表した。

 1月の大阪国際女子マラソンで優勝し、松田瑞生(ダイハツ)がマークした2時間21分47秒をターゲットとするレースは、序盤から1㌔3分20秒のハイペースで進んだ。昨年9月、男女で行われた選考レース、「マラソングランドチャンピオンシップ」(MGC)では6位に泣いた一山は、ラストチャンスにかけて高地トレーニングに渡米。「3分20秒のペースでどんな時でも絶対に走れるよう、脳と体に叩き込んだ」(永山忠幸監督)と、ハードなトレーニングを積んだ。

 30㌔手前、ペースメーカーが離脱してから、「鬼メニュー」(一山)と呼んだそんな練習の成果が姿を現した。マラソンを始めてわずか1年、4回目のレースにもヒロインは頭も心も極めて冷静にコントロールしていたという。

 「名古屋は30㌔の給水からレースが動くとアドバイス頂いていた」と、海外勢を給水前で一気に引き離して1㌔3分14秒の猛スピードで給水テーブルにダッシュ。給水中、給水後も含めて、29㌔から32㌔までの3㌔を全て1㌔3分14秒と、この日のほぼ最速スプリットタイムでカバーした。異競技だがまるで、ボクシングのノックアウトパンチのようなキレと重さでライバルを打ちのめし、強さを象徴した3㌔だった。

 高橋尚子の圧倒的なスパート力を小出義雄(19年死去)はかつて「ナタのような切れ味で怖い」と表現している。「ここで行く」と決断した瞬間、一切ちゅうちょしない心意気も、日本女子の黄金期を想起させた。

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筆者

増島みどり

増島みどり(ますじま・みどり) スポーツライター

1961年生まれ。学習院大卒。84年、日刊スポーツ新聞に入社、アマチュアスポーツ、プロ野球・巨人、サッカーなどを担当し、97年からフリー。88年のソウルを皮切りに夏季、冬季の五輪やサッカーW杯、各競技の世界選手権を現地で取材。98年W杯フランス大会に出場した代表選手のインタビューをまとめた『6月の軌跡』(ミズノスポーツライター賞)、中田英寿のドキュメント『In his Times』、近著の『ゆだねて束ねる――ザッケローニの仕事』など著書多数。

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