マラソン界初の選考法MGC約3年で全て終了、真価は五輪本番で判明
国内最高、日本歴代4位で代表を決めた 一山の恐るべきノックアウトパンチ
増島みどり スポーツライター
30㌔まではジョグ ネガティブスプリットと‘あがり’が日本記録更新の手形に
「こんな言い方は変ですが、30㌔まではジョグ(ジョギング)みたいな感じで・・・(3分20秒の設定ペースより早くなっても)ヨシヨシって感じでした」
レース後「フフフ」と、クビをすくめて笑った。2時間20分29秒は、国内の最高記録だった野口みずきの2時間21分18秒を49秒も上回る。しかしさらに目を見張るのは、野口、高橋尚子がそれぞれベルリンでマークした日本記録(当時)を「上回った」パートだ。
まずネガティブスプリット。悪条件のもと、一山はペースメーカーが風よけの役割も果たしていた前半ハーフを1時間10分26秒で通過。一人旅になってからの後半を1時間10分3秒でカバーし、42㌔の後半を23秒速く走った。後半を速くまとめる走りを「ネガティブスプリット」と呼び、こうした走り方が世界で戦うための標準とされる。黄金期を支えた歴代記録、野口の日本記録2時間19分12秒、2位渋井陽子の2時間19分41秒、3位高橋の2時間19分46秒もネガティブスプリットではなく、前半の貯金を最後までキープしたものだった。
次にラスト2.195㌔でランナーの底力を示す‘あがり’と言われるパート。当時日本記録保持者となった3人を圧倒する7分13秒と、
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