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新型コロナで中止のフィギュアスケート世界選手権、10月開催はできるのか

田村明子 ノンフィクションライター、翻訳家

過去の世界選手権の緊急事態

 世界選手権の開催が中止になったことは、過去に何度か例がある。第一次世界大戦中の1915年から21年まで、そして第二次世界大戦中の1940年から46年まで。さらに1961年には、米国選手団がプラハ世界選手権に向かうために搭乗した飛行機がベルギーで墜落し、急遽大会は中止となった。

 もっとも記憶に新しいのは、2011年のことである。3月11日に日本を襲った東日本大震災のため、東京で予定されていた世界選手権が中止になったことだ。

 もっともこれは中止ではなく、延期開催となった。ISUが急遽代替地を募り、4月の末、すでに暖かくなったモスクワで世界選手権が開催された。筆者も現地に赴いたが、通常は1年がかりで行われる開催準備を、わずか1カ月足らずでそつなく成し遂げたロシアの底力を、改めて見せつけられる思いだった。また選手たちがロビーで被災地へのメッセージを集めていた姿は、心に焼き付いている。

 だが今回は世界的なパンデミックとあって、安全な土地はない。あったとしても、人々が集まった時点でそこはすでに安全ではなくなってしまう。

2019年の世界選手権表彰式のメダリストたち。(左から)羽生結弦、ネーサン・チェン(アメリカ)、ヴィンセント・ジョウ(アメリカ)=2019年3月24日、さいたまスーパーアリーナ拡大2019年世界選手権の男子メダリストたち。(左から)羽生結弦、ネーサン・チェン(アメリカ)、ヴィンセント・ジョウ(アメリカ)=2019年3月24日、さいたまスーパーアリーナ

宙に浮いた形の「スケーティングアワード」

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筆者

田村明子

田村明子(たむら・あきこ) ノンフィクションライター、翻訳家

盛岡市生まれ。中学卒業後、単身でアメリカ留学。ニューヨークの美大を卒業後、出版社勤務などを経て、ニューヨークを拠点に執筆活動を始める。1993年からフィギュアスケートを取材し、98年の長野冬季五輪では運営委員を務める。著書『挑戦者たち――男子フィギュアスケート平昌五輪を超えて』(新潮社)で、2018年度ミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。ほかに『パーフェクトプログラム――日本フィギュアスケート史上最大の挑戦』、『銀盤の軌跡――フィギュアスケート日本 ソチ五輪への道』(ともに新潮社)などスケート関係のほか、『聞き上手の英会話――英語がニガテでもうまくいく!』(KADOKAWA)、『ニューヨーカーに学ぶ軽く見られない英語』(朝日新書)など英会話の著書、訳書多数。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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