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新型コロナで、ニューヨークは同時多発テロより大きなダメージ

マンハッタンはSF映画のようなゴーストタウン化

田村明子 ノンフィクションライター、翻訳家

 まるで出来の悪いSFホラー映画を見ているようだ。

 新型コロナウイルスの影響で、平日昼間の人口が400万人とされるニューヨーク・マンハッタンが、ゴーストタウン化してしまった。

 3月17日火曜日は、アイルランドの聖人、聖パトリックの祝日である。アイルランド系移民が多いニューヨークでは、いつもの年なら五番街をパレードが練り歩き、緑の帽子やシャツなどを身に着けた人々がパブに押し寄せて、ギネスビールなどで景気よく乾杯をするお祭りがあるはずだった。だが今年は新型コロナウイルスの感染防止対策で、パレードは中止。1762年にパレードが始められてから、中止になったのは今回が初めてのことだ。

 だがそのことを悲しむ声は聞こえてこない。いや、本日が聖パトリックデイだということすら人々は忘れているようだ。

ゴーストタウン化したニューヨーク拡大ゴーストタウン化したニューヨーク=撮影・筆者

第1号感染者はユダヤ系男性

 ニューヨークに新型コロナウイルスが到達するのは、時間の問題ではあった。この街は多くのアジア系移民を抱えていて、2月初頭にトランプ政権が中国からの航空便に制限をかけるまで、相当数の往来もあったはずだ。

 だが意外なことに3月3日に判明した感染者第1号は、郊外のニューロシェル在住でマンハッタンに勤務するユダヤ系の男性弁護士だった。本人はアジアへの渡航歴はなく、感染が判明する前にマイアミに出張したという。

 感染源は不明なままだが、この弁護士の家族、同僚、車で病院に連れて行った友人などに次々と陽性が判明。ニューヨーク州と市はこの最初の感染者の勤務先の住所なども公開し、子供たちの通う学校のクラスも一時閉鎖した。

 本人のプライバシー保護よりも、市民たちを感染の拡大から守ることを優先した政府の対処の仕方は、日本政府の対応と対照的と言える。幸い、このユダヤ系弁護士とその一家がそのためにバッシングにあったという報道は今のところ見当たらない。

 さすがニューヨーカーの民度の高さ、と言いたいところなのだが、この感染者第1号が例えば貧しいアジア系移民であったなら、政府の対応は同じでも、一般の市民感情はまた違ったのではないか、という気も実はしている。

 ニューヨーク市内で、2月からアジア人に対する何件かのハラスメント行為がSNSなどを通して報告されている。筆者が見た限りでは、今のところ加害者はいずれも精神を病んでいる、あるいは薬物などに影響を受けている様子が見られた。また一時のイスラム系移民に対するハラスメントの時も同様だったが、ニューヨーカーはこうしたヘイトクライムを見て見ぬふりをせずに被害者を庇ってくれる人も少なくないので、筆者は特に心配はしていない。

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筆者

田村明子

田村明子(たむら・あきこ) ノンフィクションライター、翻訳家

盛岡市生まれ。中学卒業後、単身でアメリカ留学。ニューヨークの美大を卒業後、出版社勤務などを経て、ニューヨークを拠点に執筆活動を始める。1993年からフィギュアスケートを取材し、98年の長野冬季五輪では運営委員を務める。著書『挑戦者たち――男子フィギュアスケート平昌五輪を超えて』(新潮社)で、2018年度ミズノスポーツライター賞優秀賞を受賞。ほかに『パーフェクトプログラム――日本フィギュアスケート史上最大の挑戦』、『銀盤の軌跡――フィギュアスケート日本 ソチ五輪への道』(ともに新潮社)などスケート関係のほか、『聞き上手の英会話――英語がニガテでもうまくいく!』(KADOKAWA)、『ニューヨーカーに学ぶ軽く見られない英語』(朝日新書)など英会話の著書、訳書多数。

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