桜井泉(さくらい・いづみ) オピニオン編集部記者
1959年生まれ。1984年に朝日新聞入社。1991年に1年間、ソウルで下宿生活をしながら韓国語を学ぶ。韓国大統領選挙や日韓交流、在日コリアンをめぐる問題などを取材してきた。社会部、ハノイ特派員(1997~99年)、学芸部(現文化くらし報道部)などを経て、2015年11月から現職。
※プロフィールは、論座に執筆した当時のものです
あいちトリエンナーレのあり方検討委員会の報告書は疑問点や問題だらけ
激しい電話攻撃や脅迫により、昨年(2019年)夏、「あいちトリエンナーレ」の企画展「表現の不自由展・その後」が、一時中止を余儀なくされた。愛知県が設置した、外部の専門家による検討委員会は昨年末、一連の経緯や展示方法などを検証した調査報告書と、今後のあり方についての提言を公表した。これらを読むと、報告書自体の疑問点や矛盾が次々と浮かび上がるが、メディアも含め議論は低調だ。
検討委員会は、座長を山梨俊夫・国立国際美術館長、副座長は旧運輸省出身で愛知県政策顧問の上山信一・慶応大学教授が務める。ほかの委員は、美術や文化政策、憲法の専門家ら4人。上山さんが記者会見の場で終始、主導しており、報告書をまとめるにあたっても議論をリードしたとみられる。
企画展「表現の不自由展・その後」は、過去に公立美術館で展示が中止となったものなどを見せるという趣旨で、韓国人作家夫婦による慰安婦を表現する少女像や日本人作家による昭和天皇の肖像を扱った作品などが展示された。
昨年8月1日に開幕したが、電話やメール、ファクスなどによる攻撃や脅迫が殺到(8月中に計1万件余り)し、逮捕者も出た。このため、企画展は3日間で一時中止となった。報告書は次のように記す。
「作品の制作の背景や内容の説明不足(政治性を認めたうえでの偏りのない説明)や展示の場所、展示方法が不適切であり、またSNS写真投稿禁止の注意書きを無視する来場者が続出したため、来場していない人たちから強い拒絶反応と抗議を受けた」
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