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[39]緊急提言:コロナ対策は「自宅格差」を踏まえよ

感染も貧困も拡大させない対策を

稲葉剛 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

拡大首都圏に拠点を持つ企業でつくるTDMテレワーク実行委員会が開いた「緊急テレワーク相談会」=2020年3月10日、東京都品川区
 春分の日から始まる3連休、皆さんはどう過ごされただろうか。

 新型コロナウイルスの感染が拡大している状況を踏まえて外出を控え、自宅で過ごしたという人も多いことだろう。

 政府や専門家からは不要不急の外出を控えてほしいという呼びかけが繰り返し行われている。

 テレワークの導入や小中高校の一斉休校により、老若男女を問わず、自宅で過ごす時間がこれまでになく延びてきている。

 3月19日、政府の専門家会議は「入院治療が必要ない軽症者や無症状の陽性者は、自宅療養とする」ことを提言した。ここでも「自宅」がキーワードになっている。

温存されてきた「自宅」をめぐる格差

 だが、一言で「自宅」と言っても、その住環境には大きな格差が存在する。長年、住まいの確保は自己責任と考えられてきた日本社会では、適切な住まいを保障することが住民の福祉の向上につながるという「居住福祉」の観点が弱く、「自宅」をめぐる格差は温存されてきた。

 特に都市部に暮らす低所得者層は、十分な広さの住宅を確保できていないことが多く、中には安定した住まいそのものを失っている人も少なくない。

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐための対策やコロナ問題に端を発する経済問題、教育問題への対策では、こうした「自宅格差」を踏まえる必要があると私は考えている。

 具体的には以下の点について考えていきたい。

1.「自宅」の住環境によって家庭内での感染リスクが高まる危険性がある。
2.「自宅」の住環境や通信環境によって子どもの学力格差が拡大するおそれがある。
3.経済危機の影響で生活困窮者が「自宅」を失わないための支援策が必要である。
4.経済危機の影響で「自宅」を失った人に対して、感染リスクを考慮した支援策を提供する必要がある。

以下に一つずつ見ていこう。


筆者

稲葉剛

稲葉剛(いなば・つよし) 立教大学大学院21世紀社会デザイン研究科客員教授

一般社団法人つくろい東京ファンド代表理事。認定NPO法人ビッグイシュー基金共同代表、住まいの貧困に取り組むネットワーク世話人。生活保護問題対策全国会議幹事。 1969年広島県生まれ。1994年より路上生活者の支援活動に関わる。2001年、自立生活サポートセンター・もやいを設立。幅広い生活困窮者への相談・支援活動を展開し、2014年まで理事長を務める。2014年、つくろい東京ファンドを設立し、空き家を活用した低所得者への住宅支援事業に取り組む。著書に『貧困パンデミック』(明石書店)、『閉ざされた扉をこじ開ける』(朝日新書)、『貧困の現場から社会を変える』(堀之内出版)等。

※プロフィールは原則として、論座に最後に執筆した当時のものです

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